【オンライン】145話:イベント騒ぎは大騒ぎ



   ♢♦♢♦【ティフォナス(樹一)視点】♢♦♢♦



「このパーティーは一体全体、なんでこんな形になったんだな?」

「知らない。別に良いじゃないの、久しぶりに集まった悪友三人組って事でさ」

「それはお前の兄だったらの話だろうが、むしろ止める側だったよね」


 テイマー二人に盾役(囮役)が一人。後は全員がモンスター達だ。

 とは言っても俺の相棒はスパイクだけで、後はアズミルのテイムモンスターが数匹。

 モモンガとフクロウ。そして……アライグマかな?


「お姉様と共にしっかりと戦って見せますよ」

「あぁうん……出来れば名前で呼んで。お姉様じゃあなくってさ」


 この子は男だと知っている筈なのに、俺を一度として男性と認識してくれない。


「ふふ、何を行ってるんですか? お姉様はお姉様なんですから。こちらでもリアルでも変わらず性別はお姉様でしょう」


「ごめん、何を言っているかサッパリ解らない」

「性別イコール名前なんだな。良く解ると思うんだな」


 どうやらこの場で理解できないのは俺だけらしい。

 髪を乱暴に搔き乱すと、すぐにアズミルが櫛を取り出して髪の毛を整えてしまう。


「もうお姉様ってば、レディーがそんなクシャクシャな髪をしていたらダメですよ」


 肩を落としてため息を付く。

 そんなやり取りをガウが横目で見て、何が面白いのかしらないが笑っている。


「はぁ、そろそろ始まるぞ」

「拙者は何時でも、準備万端なんだな」

「一番槍って聞こえは良いけれど、実際の戦争だと、ただの特攻部隊よね」

「コレから突っ込むって時に、なんとも嫌な発言なんだな」

「士気を下げるなよ」

「は~い、まっ上手くやりましょうね。お姉様」


 小鬼達が並んでいるとは言えど、人間みたいに長槍を持って待ち構えている訳でも無いし、盾持ちが前を塞いでる訳でも無いんだから大丈夫だろう。


 ケリアさん達は反対側で突撃達として、俺達同様に仕掛ける手筈だ。

 俺達が自陣の前に出てきた事で、相手方も慌てた様に自陣から顔を出してくれる。


 ボウガさんが作ってくれた《戦場太鼓》を露店大将と呼ばれている人が、景気よく鳴らしまくってくれる。効果は、太鼓の音が聞こえる範囲の仲間全員。力と攻撃力が上昇だ。


〈では皆さん、作戦開始です〉


 スノーのシャウトコメントが表示された。

 それと同時に俺達全員が真っすぐ敵に向かって突き進む。

 俺達以外にも⒍パーティが横一線で並んでいる。

 反対側に居るケリアさん達も同じ感じで飛び出しているだろう。

 他パーティの戦士が少し前へ飛び出して、周りに響く大声で相手を威嚇した。


「戦士の《ウォクライ》って技でござるよ、気にせずに突っ込むんだな」


 なるほど、ああいう技もあるんだ。

 戦士の御蔭で敵前方が少しだけザワつき、動揺している様子が見える。


「アズミル! その二人で空から攻撃してくれ。ガウは攻撃に合わせて突っ込めるか?」

「お安い御用なんだな」


「二人とも聞いたね! フール! 背負って天高く昇りなさい、その後は二人で一気に好きな大技を御見舞いしてあげちゃって良いよ」


 アズミルの少し後ろを付いて来ていたフクロウにモモンガの子が飛び乗って、すぐに音も無く空高く上昇していく。次に小鬼達の頭上に着いた瞬間に急降下していき、翼を激しく動かすと風の刃が真下に飛んでいく、その場所を目指してモモンガの雷鳴が追う様に落ちた。


「【古武術】《縮地》シフトの《シールドバッシュ》でござる」


 背中の大楯を構えたかと思ったら、ガウが一瞬にして相手に詰め寄っていた。

 フクロウが使った風の刃が砂埃を巻き上げて切り刻み、追撃に雷攻撃。

 体の自由が利かない状態でガウの大楯による突撃で一気に前線が崩壊していく。

 崩れた箇所に俺達が飛び込み左右に向かって、もう一撃を入れてやる。


「【モンスターマジック】スパイク、合わせて行くよ《ダブルニードル》」

 俺の掛け声と共に、スパイクも同じく技を使ってくれる。

「チェイン! 《グランドニードル》」

 下から大きんトゲが突き出して、地面を走るように進んで行く。

「やったな成功したぞ」

「ピぃピー」


 小さい前足をバタつかせて、一緒に喜んでくれる。

 俺の後ろでもアズミルとアライグマが技を放って、前線に居た小鬼達を倒していた。


「それじゃあ一当てしたし、一旦下がろうか」

「そうでござるな。っとと、コレを忘れていたでござる」


 ガウがインベントリからアイテムを取り出してた。

 赤いガラス玉のように見えるが、いったい何のアイテムだろう。


「ねぇそれって……」

 アズミルが口端をヒクつかせて、一歩だけ下がった。


「コレを敵陣の中に投げたら、急いで逃げるんだな」

「まて、俺は何も聞いてないぞ! なんなんだそのアイテムは!」

「ミカさん特性、錬金アイテムでござる。その名も『怒りの晩酌香』という」

「あのガラス玉の中にある赤い煙を吸い込むと勝手に『怒り』って状態異常になるの、それと同時に高濃度のアルコールも混じってるから『酔い』もプラスされて、周囲の敵味方関係なく暴れる様になる」


「なるほど……ん? その効果って使った本人や仲間にも?」

「もちろん、影響を及ぼします」


 アズミルの不安そうな顔としばらく見つめ合っていると、ガウが高らか笑い出した。


「あそ~れ、いくでござるぞ~」

 中隊のリーダー達が居る付近を目掛けて思いっきり投げやがった。


「ミカさん特性って、あのガラス玉が破裂したらどうなるんだよ」

「大体、この辺まで煙が充満するんだな」


 それを聞いて一目散に俺達は逃げ出した。


 他の箇所でも似たような状態らしく、皆がホームに向かって全力疾走だ。





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