【オンライン】125話:イベント騒ぎは大騒ぎ(一日目後半)




 数だけが多い雑兵はトラップだけで倒せる事は確認できたが、どうやら知識がある護衛からリーダー格のモンスターは引っかかってくれない。


 罠に掛ける方法は、相手を怒らせるかプレイヤーが誘導しなければならない。

 中隊規模になると簡単な落とし穴や足かけだけでは意味がなくなってしまうようだ。

 その様子を安全な柵の中からニンフィに乗って眺めている。


 防衛陣地の近くで戦うと全能力が上昇するバフが掛かる仕様で、プレイヤーさん達は自陣からほぼ離れずに戦っている。


 距離で言えば二百から三百メートルだと効果が高い。

 それ以上離れると効果は半減で、敵陣と半分くらいの所だとバフは掛からないらしい。

 逆に自陣から離れすぎて、敵陣に近すぎればデバフが掛かる。


「溝堀でも作るかのぉ」


 ダイチお爺ちゃんが相手の動きを観察しながら言う。


〈猪じゃあないですよ?〉

「同じようなもんじゃろう」


 野生の猪を鳴子と溝堀で驚かせて追い返す手段に昔使われていた手だが、効果があるかどうかは疑問だ。まぁ雑兵は猪みたいに突っ込んでくるだけだから引っかかりそう。


「人型ってだけで意味はあるもんじゃよ。足が取られるだけでも随分違うぞ」


 確かに鬼のモンスターは人型しか今の所は見ていない。

 行動の制限は出来るもんね。


「ここから矢を打ってるだけでもスキルポイントが稼げるから、美味しいのよ」

〈というか皆さんイキイキと戦ってますね〉


「そりゃあそうよ。どこ行ってもサポートしか頼まれないんだから、ある程度に好き勝手戦える場所ってあんまりないのよ。テイムしたモンスターだって預り所に頼んで連れていけない事だってザラなんだから」


 ストレス発散みたいな感じになってる訳だ。

 テイムした好きなモンスターとパーティーどうしで組んで、一緒に数多くのモンスターを相手に無双していく姿は、頼もしい……かもしれない。


「さぁさぁどんどん狩ってくぞ、狩りつくすぞ。日頃から馬鹿にされてる怨みを奴等で晴らしてやれ。遠慮はいらない、存分に暴れろ」


「有象無象を蹴散らして駆けろ、どんどん吹き飛ばしていくぞお前達! ハイヨッ⁉」

「行くぞ~、ここならお前らは最強だ。強く当てれ、今までにない快感が得られるぞ」


 こっちが蛮族に見えてくるんだよ。

 あの絵面は駄目だと思うだ。


「ねぇねぇウサちゃん、次は何を手伝えば良いかな。私達も一緒に手伝うからね」

「ハチさん、コレなんかどうです? 良い感じになりませんかね。……ダメですか」

「うへ、うへへ。可愛いスクショが一杯。君達、いい被写体だヨ」


 他の部分も、違う方向で子供に見せちゃダメって言われる顔をしてる人が多い。

 可愛らしい女の子なのに、お兄さんは残念です。

 半分くらいは暴走している気がする。

 まともな人達はというと。


「よ~し、そっちに張ってくれ。右側をもうちょっと角に整えてくれよ。見た目が悪くなっちまうからな、外から見ても綺麗に見えるよう気を付けろよ」


『リョウカイした』

「大将、支えるのはこっちで良いのか?」

「もうちょっと上に、そうよしそのまま維持だ」


 建築勢しかまともな人はいないんじゃないだろうか。


〈こんなもんかな、パーツは全部揃ったね。後はボウガさんに頼んでたヤツが届けば完成だ、ついでにバリスタでも作っておいた方が良いのかな〉


 連射版と威力重視の二種類を作ってみたけど、上手くいくのかな。半分くらいはパニアの能力に頼る事になりそうだけど、これ見せたらまた変な性格に進化しない事を祈りたい。

これで性格とか捻じ曲がってきちゃったら嫌だな。


 矢の生成はパニアの能力次第で装填時間が変わるのか、それとも一定の時間が掛かるかは実際に試さないと分からないのが痛いな。


〈でもこれ、どこに設置しようかな〉


 自分で一つ一つのパーツを作っている時には全くもって気が付かなかったが、改めて全部を組み合わせたモノを想像してみると、相当デカい大きさになる。


 また僕が装備出来ない代物が出来上がってしまった。

 もう、いっそのこと投石器を作った方が早かったのでは、そう思えてきてしまった。


〈ボウガさんとパニアに投石器を作って貰おうかな。僕が作るよりもなんか凄いの作りそうだし、アリかもしれないな〉


「なんじゃそのトウセキキとやらは?」


〈巨大な石を遠くへ飛ばす……攻城兵器ですね。エーコーさんが覚えれば、相当な力になるんじゃないですか? 木造りですし、獣皮や植物製の網なんかを使ったてこの原理を利用したモノなんですよ〉


「ほう……面白そうじゃあな。スノーよそれを教えてほしいぞ」



〈まぁ別に構わないですけど〉



 なんかエーコーさんのテンションが高い気がする。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る