【オンライン】124話:イベント騒ぎは大騒ぎ(一日目後半)
森の入り口まであと少しという所で鬼達の妨害が激しくなってきた。
今まではジャンシーズの人達が引き付けていた分が、少しこっちに回って来た。
「敵が多くなってきたわね」
「雑魚ばかりじゃ、どうという事はないじゃあろう」
アズミルとエーコーさんが柵から身を乗り出して外側の様子を確かめている。
僕はというと、作業台を引っ張り出して余った木材を一生懸命に削っている。
「スノーそこはもうちょっと丸く外側に反る感じにした方が良いな」
ボウガさんにも設計図を見てもらい、色々と修正案をくれたりアドバイスを貰いながら付きっきりで教えて貰っている。
柵作りはもうゴーレムさん達だけで回せるようになっているらしい。
『キリキリ、ハタラク。ワレラ、シゴトにん』
エーコーさんやボウガさん、それに集落の人達から感謝の言葉やお礼を一杯貰ってから、パニアがかなりの働き者になってしまった。
石材なんかも貰ったから、ゴーレムの数が二体ほど増えている。
「スノーはいったい何を作っておるのじゃ?」
〈ボウガン、ですかね?〉
「なんで疑問形なのかな、お姉さんすっごく怖いんだけど」
実質的に人が使えるモノじゃな無い。
まぁ、トラップになるように作らないと僕では扱えないのだから、仕方ないね。
一度作ってしまえば、ある程度の手順を簡単に省略が出来るようになる。
作るまでが大変なのだ。
〈ボウガさん、頼んでたヤツは出来そうですかね?〉
「あぁ~どうだろうな、数日は掛かるがパニアの御蔭で上手く行きそうだぜ」
『キタイ、しているとイイゾ。サイコウのモノをツクッテみせる』
パニアがプロの職人に見えてきたよ。
タリスマンが踊っているだけなのに、背中で語る達人みたいになってきてしまった。
〈無理はしないでね〉
『シンパイ、ムヨウ。ヤルことがアル、ウレシイことだ』
上手く出来るかは分からないけれど、何もないよりはマシだろう。
設置兵器をトラップ連動出来るのかは、かなりの賭けだけどね。
「遠目で見ると遊んでいる様にしか見えないわね」
「作ってるもんが物騒じゃあなければ、可愛らしくはあるのだがの」
「俺もなんでこんな代物を拵えなくちゃあならねぇんだか、それも嬢ちゃんに作らせて」
〈理由は後で話すからさ。ここではその事に関してはお口チャックでお願いしますね〉
初心者を助けたいって気持ちで手伝っている人達もいるだろうけど、偵察目的で動いている人も居ると思うんだよ。
じゃなきゃあ貴重な戦力であるテイマーさんを野放しにはしないと思う。
アズミルの能力が良い例だろう。
高レベルのテイマーは使役出来るモンスターの数が増えるって言うし、手の内を見せていない人達は多いと考えるのが妥当だろう。
このレベルで引っかかってくれるなら、それほど意識はされてないって事だろう。
「私はいいの? エーコーさんは分かるんだけど」
〈ガウとティフォのお墨付き、問題なし〉
本人を知っているとは流石に言えないしな。
悪いがガウを生贄しつつ、樹一を召喚して更に生贄に捧げて信頼を得ようと思う。
「ふ~ん、本当に仲が良いのね」
観察と敵意の混じった視線はスルーだ。
さり気なくボウガさんとエーコーさんが逃げて行ったのが解せないが、まぁ仕方ない。
〈こんど、オフ会でもします? お呼びしますよ〉
「あら本当に良いの? 私が行っても?」
〈ガウもちょくちょく遊びに来てますよ。ティフォとは家がお隣さんなんです〉
「……私ね、新しいティフォナスお姉様の家は知らないのよ」
〈僕の家に招待するんですよ? ちゃんと教えますよ〉
「え、あぁ……そうね、お願いするわ」
アズミルとフレンド登録とコードギアを登録した。
「ねぇ~、聞いて良いかしら」
〈な、なんでしょうか? あ、あの……近くないですか?〉
アズミルさんが隣に座って体を密着させてきた。
「お姉様の事は、アナタは狙ってないのよね」
耳元で囁かれる言葉が、何故か氷の息を吹きかけられているかの様に冷たかった。
〈すごく面倒見の良いお姉ちゃんですけど〉
ここで下手な反応をすれば、完璧に敵認定されてしまう。
実際、どうとも思ってないし本当にお姉ちゃんという感じだから、嘘偽りなく答える。
「そ、それならよかった。アナタとは良いお友達になれそう」
さっきまでの雰囲気が嘘のように、お日様の様な明るくあったかい感じの人柄に戻った。
はぁ、樹一の周りには怖い女性しかいない気がする。
生徒会長しかり、アズミルもとい、杏ちゃんしかり。
どうして樹一はあぁいう女子に好かれるのだろう。
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