【オン97】イベント騒ぎは大騒ぎ




「戻ってくるときに居た人達はいったいなんだったんだろうね」


 ホームまで戻って来てから、シュネーがさっきの人達を思い出したようで、少し噴き出しながらオレに聞いてくるけど、分かる訳がない。


『知ってるとしたら、ガウかケリアさんかティフォに聞いてよ』


 絶対にオレに隠している事があるのはずだが、頑固なほど口を割らないんだ。


 ケリアさんなんて「ボウガさんを連れてくる」と言って、オレが話しを聞こうとしたら速攻で話しをはぐらかす様に逃げ出して行ったしね。


 目を細めながらジットリと見てやっても、視線をサッと逸らされるだけだ。

 それだけでも、何か隠してるのは分かるって言うに言わない。


「楽しい人達だったよね~。よく露店を開いてる人達も居たし」


 確かに何か不思議な人達が多かったけど、オレやシュネーが少し反応しただけで雄たけびを上げて、モンスターに突っ込んで行ってたからね。


『パニア、調子はどう?』

「モンダイ、ない。チョウシもヨク、カイテキ、な、ほど」

『そっか、働き過ぎないでね』

「ウム、ムリはシナイさ」


 シャランと光を散らしながら、タリスマンが台座でクルクルと踊っている。


「後で解体屋の所に行こうぜ。どういうもんか見てみたいしな」


「此処に住まう解体屋の主人は捻くれ者でござるから注意するんだな。まぁ渡り人……プレイヤーキャラが嫌いで有名な方だという噂なんだな」


 オレ達もまだ会った事が無い人だ。

 ボウガさんの紹介があれば、会ってくれそうだけど…… どんな人なんだろうな。


「ふむ、活気があると言えばあるのか。まぁ、なんとも伸び伸びと暮らしとる者達が多い」


 エーコーさんは集落を見回り終わったのか、ニンフィを抱きしめたまま知り合いのお姉さんがお散歩から帰って来た様な感じで声を掛けてくる。


 お疲れなのか、小さく寝息を立てているニンフィを泉に咲いた花に寝かせてあげている姿は、まさに面倒見の良い保母さん感がある。


「あのヤンチャなウサギ共や、悪戯好きなハチ共が何とも楽しそうに暮らして居るモノよ」


 その辺はティフォやダイチ爺ちゃんの御蔭だね。


 ……あれ? オレって結局なにもしてない気がするんだけど。大丈夫なんだろうか?


 いかん、気にしてはいけない部分に気付てしまったかもしれない。


「何を百面相をしておるんだ、主は?」

『気にしないでください』

「どうせ、どうでも良い事に気を張ってんだろう」


 ティフォが急に後ろからオレの頭をグリグリと、力強く撫でまわしてくる。


「こら~、僕の特等席をぐちゃぐちゃにするな~」


 お前の特等席でもないぞ、オレの頭の上は。


「まぁよい、しばらく厄介になるぞ。一日だけ見たとて、本質は見えんからな」


 泉の近場には、もうエーコーさんがくつろげる様なスペースが出来ている。


 大きな大木の木が育ち、そこにはツリーハウスさながらな家と、泉の面した場所にはハンモックという、なんともグウタラ出来る空間が出来上がっている。


 大木だが、日差しを考慮してか、ニンフィの寝床に適度な日差しが入る様にしてある。


「居座る気が満々と感じるのは気のせいでござるかね」

「……気のせい、じゃない」


 シュネー? それはどっちの意味で言っているのかな。


 皆の顔が引き攣りながら笑っている。もちろん、オレもだ。


「どうしたのだ?」

『いえ、その……此処で良いんですか?』


 オレのホームのすぐ真横なんだけど。


「うむ、この泉は良きモノのようだしな。心地良く過ごせそうだ」


 綺麗なお姉さんの微笑みは、破壊力があるね。



 一瞬、チラッとティフォとガウを見たけど、呆けた顔をしてたよ。




 オレだって魅かれる程の微笑みだったけど。

 性別が女性のせいか、威力はそこまでのモノじゃなかったけどね。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る