閑話:【???】



    ♦♢♦♢閑話:【???】♦♢♦♢



「その、すいません……また、出し抜かれたみたいです」


「まぁしょうがないね。有益な情報も回って来たんだし、こちらとしては問題なし」

「もう東のフィールドはあの子達に任せるしかないね~」

「別に団長も怒ってないから、気にし過ぎないように」


「それにしてもどうしようか、俺らのやり方って団長メンバーとファーマーちゃん、その補佐メンバー以外はNPCの好感度ってさ、軒並みに低い連中の集まりしかいないぜ」


「ブラック企業さながらな働かせ方してるからね~」

「恨まれて当然ってか、今から好感度の回復ってのも面倒なんだよな~」

「コツコツやってくしかないでしょう、蔑ろにした自分達が悪いんですから」


「結局、ケリアの言うてる事の方が正しかったっちゅうことやろ」


「しょうがねぇだろ。アイツはクラフターよりも前線で戦ってる方が役に立つって、そうやって皆で脅す感じでせまっちまったんだから」


「あの才能を後方支援に置くのは、愚策でしたからね。本人の意思に反してずっと付き合わせてしまった結果、と……言ったでしょうね」


「や、辞めていった奴の事なんでどうだって良いじゃないですか⁉ 俺達は攻略組の最前線で戦ってるんですから! 誰よりも結果を出してるんですよ」


「にゃ~、そう言うことを言ってるんじゃ……まぁイイにゃ」


「見ててくださいよ、イベントで俺達が巻き返してみせますから。失礼します」


「ありゃりゃ、出てっちゃったよ」

「これ以上のトラブルは、正直、御免なんですがね」


「自ら気付いて貰えるように、団長は東フィールドの攻略を頼んだっての、誰か言ってやった方が良いんじゃね? 団長達の気持ちも解るけどよ」


「しかし、その前に自ら考える事を止めてしまっている、言いなりファーマー君の件もありますから。親友というお友達同士とは言えど、あの状態を放置してしまっている方が問題でした……今の状態は致し方ないのでは?」


「トップを張ってる私達の黒歴史ってヤツね」

「ケリアに言われるまで、皆全く気付いてなかったからね~」


「まだ、彼女がプレイしてくれていて良かったわね」

「……何が、でしょうか?」


「クランの初期設立メンバーのアンタや団長、それにファーマーの彼。まぁ、もちろん私達もだけど。誰よりも謝りに行きたいのってアンタらでしょ」


「……ふん」


「お前の無言とソッポは肯定の証だって団長が言ってたぜ」

「……余計なことを」

「いつかさ、皆で謝りに行きたいにゃ~」

「裏切って放置した挙句に、謝りもせずに逃げ出した我々が許して貰えるわけ無いけどね」

「彼女が此処にいたら「それは別でしょ」って怒られるわよ」


「謝りに行くなら全員で、だぞ」


「それには、このクランは問題が多すぎますけどね」


「街も大きく、人数も多いから仕方ないですけど……頑張りましょうかね」


「俺は、後味が悪いから……ケジメ付けなきゃカッコ悪いからな」

「はいはい、ツンデレ乙にゃ~」

「やんのかテメェ」


「ジャレついてないで、私達も行くわよ」




「……なんだかんだと、回っていくもんですね。支柱が一本無くなっても」


「出てった奴等も居るけど、ジャンシーズは俺達全員で作った街だからな~。やっぱり色々と思い入れがあるんだろうよ」


「そうですね。面倒と言いながらも、誰よりも街人の依頼クエストを熟しているムッツリ君」

「なっ⁉ なんで知ってやがんだ!」

「ロールとは言えね、秘書をやっている私を舐めないで下さい」

「あ~やだやだ。コレだから腹黒い奴は好かねぇんだよな」





   ♦♢♦♢ 視点:【エフケリア】 ♦♢♦♢



「失礼するわよ」

「おう、帰って来やがったか? どうだった森の様子は」


 ケリアがボウガの工房を除き、そこで黙々と丸太を加工しているボウガがチラッと後ろを確認して、そのまま作業を続けている。


「問題が解決した訳じゃないけどね。詳しく知ってそうな子は連れて来たわよ」

「そうかい、そんじゃあ後で顔出すか」


 スノーとパニアが創り出したゴーレムで丸太を切断しながらもくもくと切っていく。

 しっかりとケリアの話しは聞こえているようだった。


 ただ呼びに来ただけと思っていたボウガだったが、ケリアはその場から動かずにジッとボウガの背中を見つめたままで、少し悩みながら小さく呟く様に喋りだした。


「ねぇ、その……私が居るから人が集まらないのかしら」


 丸太を切断している音で聞こえていないと思ったケリアだったが、しっかりとボウガの耳には届いていたようで、慌てて取り繕って逃げ帰ろうとしたケリアを見て一言だけ。


「バカかオメェ?」


 なんて、投げかける様に言う。

 バカにした感じも含んではいるけど、何処か優しさの籠った言い方であった。


「……えっ?」


 思わず足を止めてケリアは振り返った。


「ここは元々が住みにくい場所だ。お前さんの前の仲間達が無理やり連れて来た連中が、ただただ嫌気が指して出てっただけだろう。そもそもだ、オメェがそこまでの影響力のある様な人間かよ? 随分な勘違いじゃねぇか、アホくせぇ」


「な、なによ……ちょっと気になっただけじゃない」


「確かに此処の連中は【渡り人】を嫌ってるヤツも居るがな、オメェが一軒一軒と挨拶して回って見な、きっと誰一人オメェの事を知ってるヤツなんざいねぇよ」


「あ、アナタは覚えてたし、知ってるじゃないの」


 ボウガは休憩とばかりに、近場に用意してあった椅子に座って飲み物をがぶ飲みしだす。


「ふぅ、そりゅあオメェを知ってたのが偶然だな」

「それって、どういうこと?」


「どこぞのバカが一人突っ込んで、戦い続けてる大バカが居るってんでな。ちょ~っと調べたらオメェさんだったってだけだな」


 ケリアは呆けた表情で、目をパチパチとさせている。


「ここの連中を舐めてんじゃねぇよ。確かに渡り人を嫌ってはいるがな、個人をただ嫌う様な愚か者は居やしねぇんだよ。ほれ、どうでも良い様な下らねぇ事を気にしてねぇで行くぞ。全く今度はどんな奴を連れてきやがったんだ」


 楽しそうに文句を言いながらケリアの肩を叩き、スノーのホームへと駆け出していく。



「参ったわね~。もう……結婚してなきゃアタックしちゃうわよ」

「おい止めろ、オメェは俺に近付くんじゃねぇぞ⁉ 俺にそっちの趣味はねえ」


「恥ずかしがらなくっても良いのに~」



「来るなぁ~~~~」



「もう、待って~」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る