【オン92】イベント騒ぎは大騒ぎ




 トワちゃんに話しを聞いて、自分達でも確かめようという事になった。


 オレの遅さもあって、ニンフィが起きるのを待ってから出発となったわけだけど。


「ぷぁぷあぷ~」

「ランランラ~――♪」


 ニンフィとシュネーがご機嫌に鼻歌交じりにリズムをとって体を揺らす。


『あのね、一応偵察に来てるんだけど?』


 彼女等にとってはピクニックと変わらない様子だ。


「この辺りの草原は別に変化は無いようね」

「となると、この先から森の方でござるな」

「一番心配なのは森じゃのう」


 ダイチ爺ちゃんの心配は集落含めて全員が危険視していることだ。


 あそこは資源の宝庫だと言っても良い。

 

 今のオレ達の集落に無くてはならない場所だ。

 

 下手なモンスターに住み着かれた資源が枯渇する事になったら最悪だ。


 この先は開拓どころじゃなくなってしまう。


 最悪の展開は避けたい。

 もう森でモンスターが繁殖しているという報告は聞いている。


「次のイベントにしても、あそこを選ばれるのはくかなりキツイな。木工加工だって全然進んでないのに、唯一の資源場所が戦地になるとはな」


「でも、切ってもすぐに再生するんでしょ? 大丈夫なんじゃないの?」


「シュネーちゃん、再生するのは森に住む精霊、もしくは木を育てるモンスターの御蔭よ。勝手に切って勝手に再生するほど甘いゲームじゃないわよ」


「つまり、その森の管理をしている精霊かモンスターをやられちまうと、あの森は再生しなくなって資源も手に入らなくなっちゃうんだ」


「えぇ~~、大変じゃん⁉」


 ようやく事の大きさに気付いてくれたらしい。


『戦地にするかどうかは、オレら次第だと思うけどね』


 ダイチ爺ちゃん以外の皆が一斉に「えっ?」って顔をしてオレを見てきた。


「そうじゃな、追い出すなり誘導するなりは出来るじゃろうが……問題がなぁ~」


『ハーナさんは連れて来なくて良かったんですか?』


「こういう事態にゃあハーナのヤツは家に居た方がえぇんじゃよ」


 ニシシっと笑いながら、何故か自慢げな態度でいるダイチ爺ちゃん。


 偵察に行くって時も、別にハーナさんと話し合っている姿はなかったのに、お互いは何も言わずに頷いてダイチ爺ちゃんが一言だけ、


「見に行ってくる」


 たったそれだけで、終わった。


「森の管理者に会えれば良いんじゃがなぁ」


 あの森は奥地まで行った事があるのは、ガウとケリアさんだけだ。


『流石に場所が分からないんじゃ無理ですよ』


「まぁ、しかたないのう。先ずは敵の確認じゃな」


 森の前までくると、異様な雰囲気が漂っているのが分かってしまう。


 前に来た時は綺麗。

 木漏れ日が心地良さそうな道が見えたのに今はその道が無い。


 正確にはあった場所。

 踏み荒らされて滅茶苦茶なデコボコ道になってしまっている。


 空気は重く悪い、小鳥の囀り一つ聞こえない。


「こりゃ、気を引き締めていかんとな」


「ここまで変わるのね」

「歌とか歌ってる雰囲気じゃなくなっちゃったね」

「ぴ~」

「拙者とシュネー妃、スノー姫は上から索敵するでござる」

『任せて』


 ガウは素早く近くの木に張り付き、ヤモリの様に上へと登って行ってしまった。


 しかもご丁寧に、プレート鎧は全て脱いで。

 普段着の様な初期装備を着こんでいる。


「あの図体で……凄いね」


 シュネーが呆れたように言うと、皆もそれに頷いている。


「なぁ、アイツって盾役だよな?」



「そう、じゃないかしら……ナイトでしょう、だって……自分で言ってたものね」



『やっぱり忍者か斥候の方がお似合いだと思う』



「ふぉふぉ、面白い仲間じゃのう」




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