【オン89】イベント騒ぎは大騒ぎ


『……疲れた』


 上機嫌なボウガさんにとっ捉まって結構な時間が経過したと思う。


 この【ズィミウルギア】の世界は色んな事がアンバランスだ。


 ケリアさんが普通に衣服を作っていたから気にしてなかったのだが、調合という錬金術を使って出来ているモノが殆どだ。


 簡単に説明すると、冒険者や魔導士によって物が創り出されている。


 コレだけ見れば普通だろうと思うかもしれないけれど、それはオレ達プレイヤー視点でモノを見た時の話しでしかない。


 では、この世界の住人達は? 全ての人に一定量以上の魔力はあるのかという疑問だが、《無い》と簡単に答えを出す事が出来る。


 何故か、貧民や平民が簡単に魔石・魔法石を使えない事がその証明になる。


 《魔石》は一定以上の強いモンスターから取れるレアドロップで、《魔法石》はそれを錬金術師が加工し、魔法を練り込んだモノをそう呼ぶらしい。


 扱い方を知らないのかとも思ったけれど。

 それなら大人が使えないのはおかしいだろう。


 実際にボウガさんに使えるのか聞いたら、


「ムリだな。相性が良ければ使える者も居るがな、俺達には使えない。第一コストが高い」


 真剣な顔で教えてくれた。


 どのアイテムも持っているのは貴族からで、平民区にはあっても物好きなプレイヤーが家など購入した土地くらいだそうだ。


 精霊と上手く契約出来た者は将来を有望視される。

 事もその一環だと教えてくれた。


 タムさんみたいな人は、本当に平民達にとっては心の支えと言えるんだそうだ。


 木工で作れるモノであると思っていたから、不意に言葉に出してしまった。


 糸を作る機械の事を喋ってしまった迂闊な自分のせいで。


 あの時は怖かった、両肩を凄い力で掴まれて笑顔で脅してくるんだもん。


 木工職人って言ってたから、ついつい色んなモノを作ってると思い込んでしまった自分の浅はかさも反省すべき点ではあるけどね。



 ==回想==



「ちみっちぇくせして、お前は色々と知識があるんだな」


 丸ノコ台ゴーレムを隅々まで観察するものだから、丸ノコ台ゴーレムも恥ずかしそうにプルプルと震えている。


『え? あはは、そうですか』


 純粋に褒められると、何だか気恥ずかしいな。


「ふふ~そりゃ、スノーだからね。ただの子供って見てたら痛い目見るよ」


「はは、そりゃあこえぇな……こんなモンを作れんだ。木で出来るもんとかって何か思いつかないか? 自分達で生産できりゃあ、その分を色々と他に回せるだろう」


『何かって言われても……パッと思いつくのなんてマシンカーディングくらい? いやでも木だけで作るなら、綿繰り機とか? 糸繰車あたりしか思いつかないけど、でも鍛冶屋のタムさんの協力があれば紡績機くらい――』


「ひっ⁉」


 ニッコリ笑顔で目からキラキラ光線が出そうな顔が間近にあった。


『あ、あの? ボウガさん?』


「詳しく、教えてください」


 綺麗な敬語が物すっごく凄みを増してるんですけど。



  ♦♢♦♢



 そして、ようやく解放され。

 もう何も考えない様にしようと思った今日この頃です。




 ちなみに、皆はオレを生贄として差し出していきやがった。


『覚えてろよ」




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