【オン84】イベント騒ぎは大騒ぎ
初めは真っすぐな板状のゴーレムを用意してもらったのだが、ダイチ爺ちゃんから待ったが掛かって、少し試行錯誤する事になった。
平らな状態では円柱の丸太が切り辛いだろうという助言をくれたのだ。
だから左右を高くして、丸太が固定しやすいよう改良を加えた。
パニアは平らな板状なら出来るが、綺麗で滑らかな曲線は難しいという。
だから出来る限りの滑らかなコブを作る感じで左右を高くして、中心部分が凹む形に整えた。
後は丸太をセットすればゴーレム自身が勝手に丸太を押し出して、切断できる感じで簡略化することで、難しい注文がないように気を付ける。
「ふむ、こんなもんじゃな」
『ありがとう、ダイチ爺ちゃんっ!』
「ふはは、なんのこんな事なら何時でも呼べい。伊達に年はくっとらんでな」
このゲーム内で初めて作った道具。
なんども触って、なんども試しながら修正しては、微調整の繰り返し。
しっかりと使えるように動くことも確かめた。
ちょっと感動している自分が居る。
『パニアも、ありがとうね』
「ナニ、ワレモ、タノシカッた」
台座で踊るタリスマンをギュッと抱きしめる。
パニアがくすぐったそうに震えた。
なんかちょっとだけ赤白く点滅している気がするが、気のせいだろう。
「初めて作る道具……いや~、相当に大掛かりなモノが出来たな」
「そうね~、こんなモノを作るなんて思わなかったわよ」
「しかし、何処でもは使えねぇな」
作った丸ノコ台をマジマジと眺めながら、其々が何かを考えているようだった。
「スノー姫、あのチェーンみたいなのはどうしたのでござるか?」
「それなら、あそこにあるよ」
丸ノコ台と一緒に作ったモノが、今や休憩スペースと化した泉とホームの間に置かれている。
その、机の上に異常に大きい物体が置いてある。
「刃はないけどね~、チェーンソー擬き? ってこの場合は言うのかな~」
「いやいや、見た目からしてもうチェーンソーなんだな」
「なんで机の上に置いてあんだよ?」
『なんでって……持てないから』
すべてが岩で出来たチェーンソーだ、力が最弱なオレが持てるはずもない。
「確かに、コレは重くて使えないわね」
ケリアさんが持ってみたが、机から数センチと持ち上がらず、ガクッと腕を垂れ下がる様な状態でやっと持つことが出来るレベルの重量がある。
『パニア、いる?』
「アァ、キョウミブカイ、アリガタク、イタダく」
タリスマンに吸い込まれるようにして、岩チェーンソーが消えていった。
「パニアちゃんにもインベントリが存在するのね」
「ム? フツウニ、キュウシュウ、シタ、ダケダぞ」
オレはパニアを装備して、メニュー欄の【従者】と追加された場所を開いてみると、パニアの装備に《制作武器×1個》と追加して書かれている。
コレってパニアがチェーンソーを扱えるという事で良いのだろうか? それにしては個数が表示されている意味が分からない。
「スノーどうかしたのか?」
メニュー欄と睨めっこして考え込んでいると、ティフォが覗き込んできた。
『ん~、今は気にしない』
「は? なにが?」
『気にしない、気にしない』
ティフォにジト目で見られるけど。
あえて何も触れずにティフォの視線をやり過ごす。
「ぱぁー」
ニンフィが欠伸をして、フラフラと生まれた花の方へと飛んで行って。蓮の花をベッドみたいにして眠りについた。
「遊んで疲れたのかな~?」
「まだ生まれたばっかりだしね、ゆっくり寝かせといてあげましょう」
皆で音をたてないように、そっと泉から離れる。
「それよりも、丸ノコ台はどうするでござるか?」
『どうするって、ボウガさんの所に持っていくけど?』
「どうやって?」
『ふつうに運んでいくに決まってるじゃん』
「チェーンソーだったか? アレだってモテなかったろうが。そんな重いモンをどうやってはこぶってぇんだよ」
皆は何を言ってるんだ。
「お主等、頭が固いのう……コレはゴーレムじゃろう」
「はっ? いやいや爺ちゃん、ただの台……あ? ゴーレムって?」
『パニア、一緒にボウガさんに届けに行こうよ。きっと喜ばれるよ』
「……ショウチ」
確かに丸ノコ台だけど、ゴーレムとしてもちゃんと活動は出来る。
ブロックごとに駆動機関関節を決めておけば、ある程度の形にはなる。
やっぱりロボット系やSF映画ってバカに出来ないね。
こういうのはいつ見てもカッコイイと感じてしまう。
「……おまえ、何てモノを生み出してんだよ」
『ほにゅ? なにが?』
「カッコイイ~、人型になったよ。凄い凄い」
シュネーとお爺ちゃんとハーナさん以外の皆が口をパクパクさせている。
コイみたいで面白いけど、何を驚いてるんだろう。
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