【オン78】イベント騒ぎは大騒ぎ




 全員で見守るように泉の前で待っていたけど、蓮の花が咲くことはなさそうだ。


「起きないわね」


『おきる? 寝てるの?』


「そうでござるな、蕾の状態だから何とも言えないんだな」


「基本的に大人しくって人懐っこいモンスターだから、すぐに仲良くなれると思うわよ」


「人懐っこいって、どんなモンスターなの?」


 どうせオレには懐かないんだろうな。


 騎獣や大型モンスターなら好かれやすいけど。


 小さい妖精みたいなモンスターなのは、見て分かっちゃうもんな。


「ねぇちょと……蕾が異常に大きくなってきてない?」


 見守っていると、グングン成長していっている蕾が、まだまだ膨らんでいく。


「……そう、ですね」


 ミカさんも興味深そうに見ているが、どちらかと言うと驚きに近いのかもしれない。


「もう僕よりもおっきくなったけどさ、本当に花の妖精なの?」


「あそこまで大きいのは、見たことないんだな」


『本当に蓮? ラフレシアとかじゃないの?』


 もう花が開けば、それくらいの大きさになっていると思う。


 皆の息を呑む音が聞こえてきそうだ。


「いや~、君達。知らない子も増えているようだが、渡したタネはどうだ……ね? こんな所に泉なんかあったかな?」


 イーゴさんがタイミング良く現れた。


『イーゴさんから貰ったタネは、今現在、成長中です』


「ほうほう、何処だね⁉ 流石はスノー姫だ」


 大手を広げて喜んでいる様で悪いんだけど。

 先ずは聞かなければならないことがある。


『一つお聞きしても良いですかね』

「ん? なんだい、改まって?」


「あの種って何のタネか、正直に話して欲しいんだけど」


 いつの間にか、イーゴさんが囲まれる様に逃げ道を皆が塞いでいる。


 ミカさんはケリアさんに連れられて来た感じだったけど、オレとシュネーの発した言葉で大体の事情は掴めたらしい。


「アレは拾ったタネだが? それ以上でもそれ以下でもないさ」


『何処で、どのように、どうやって拾いましたか』


 オレは少しの微笑みを浮かべる様に笑顔で、優しく丁寧にイーゴさんに聞く。


 そんなオレを真正面から見たイーゴさんが、ビクッと肩を震わせて固まった。


『どうしたんですか? 答えられるでしょう?』


 古いブリキ人形の様に錆で軋む感じで頷いてくれた。


『あれ? 何か顔色が悪いですね』


「そ、そうかもシレナイね、だから今日はこの辺でお暇を――」

「あれれ~、おかしいな~。まだスノーの質問に答えてないよ~」


 ポフンとイーゴさんの頭の上にシュネーが乗っかる。


「答えると言ったのに、それをしないで逃げるとは如何なものかと思うんだな」

「まったく、そんなに焦らさなくて良いじゃないですか」


 ガウとティフォが左右の肩に手を乗せた。


「男だろう、しっかりと話しなさい」


 真後ろに待機していたケリアさんが低くどすの聞いた声で囁く。


「……見事な連携ね」


 この場のノリで一緒にいたミカさん。

 物凄く表情筋が痙攣してオレを見ている。


『あの~、どうしたました?』


「いいえ、意外な一面を見たなって思っただけだから気にしないでちょうだい」


 少し顔を青くしてオレを見てるのが不思議で、首を傾げてミカさんを見返す。


 ブツブツと小声で何かを言っているが、よく聞き取れない。





「(えっ、なにこの子! 迫力ありすぎでしょう⁉ こっわ⁉ 怒らせちゃいけない人種だわね。今後とも気を付けて接しましょう)」




「(流石と言うか何と言うか、前も可愛い容姿だったが、今は身長がちっさい事も相まって怖さが倍増してやがる、やっぱ血筋だな……千代さんに「ユキのおばさん」って言った過去を思い出したぜ。あぁ、パンドラの箱に仕舞ったはずの記憶が蘇りそうだ。アレがまだ第一段階だってんだから末恐ろしいな)」




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