【オン70】イベント騒ぎは大騒ぎ
「フォレストヒルは魔法都市って感じでね、白塗りの建物に教会っぽい建物が多いのよ。ただ前にも話したと思うんだけど、勢力が二つに分かれてるせいで城下町もその影響を受けて、半々に入り混じった感じなのよね」
レンガや石造りの建物が多かったヴォルマインとは、また違った雰囲気だ。
ただ、統一性が全くない。
丸い感じの建物があったり、細長い塔の建物があったりする。
他には巨大な木を家にしていたり、ツリーハウスに住んでいる人も多い様だ。
「一つの勢力は魔法を中心に、もう一つの勢力は魔科学を中心に発達してるんだな」
見分けるのは簡単で、木々を使った家に住んでるのが魔法特化な人達。
教会風な建物や塔に住まう人達が魔科学を推奨している人達だと言う。
「お店は魔法薬とかが多いんだね~」
ガラス張りでいかにもファンタジー世界の薬屋さんみたいな建物が多い。
『変なのも売ってるよ?』
素材屋さんも多くあるようで、気味の悪いモノから綺麗な石まで様々なモノがある。
「それらは大体が錬金術に使う素材だな。モンスターが落とすアイテムドロップだよ」
針鼠のトゲも錬金アイテムという事だろう。
「蝙蝠の血とかあるけどさ、なんに使うんだろうね」
小さいビーカーに入っているモノを持って中身を見ている。
「材料は気にしちゃダメなんじゃないか? 知ってしまったら飲むのに躊躇するぞ」
「魔科学っていうのはあっち側だよね」
「建物自体はあんまし代わり映えしないけど、なんか変なのが一杯あるね」
遠くからでも塔に住まう人達の建物は分かりやすい。
塔の高さが自分達の力を示している感じなのだろう。
「近付いてみなさい、危なくないから」
ケリアさんが先導してくれたお店の前にたってオレに進めてきた。
『自動ドア?』
言われた場所に立ってみると、扉が勝手に横へと移動していく。
「下にある魔法陣が反応してるんだな。土の魔法陣だったと思うんだな」
ガウが説明してくれていると、中から女の人の声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ~」
ポニーテールのちょっと妖艶な女性が一人カウンターの中で寝ころんでいた。
細目で見えているんか不思議な感じだけど、しっかりとこちらを向いている。
「あら~、ミカじゃない。今日は繁盛してるかしら?」
「ケリア~じゃん、おひさ~。最近は顔を全然出さないから寂しかったわよ」
二人はお互いに手を振って挨拶している。
『お知り合いですか?』
「えぇ、昔馴染みよ。ほら~私の着る服ってエフェクト出たりするじゃない。アレの元となる薬品や糸を作って貰ったりしてるのよ」
あぁ、アレってこの人に材料を作って貰っていたのか。
「最近は全然買いに来ないじゃない」
「まぁね~、色々と楽しい事が多くって手付かずなのよ。それに、一から服を作ってる最中だから、まだまだ先になりそうよ」
そういえば、ゲームにログインと確実にオレ達と行動しているもんね。
本当に色々とケリアさんにはお世話になってるなって思う。
「ふ~ん、まぁ楽しそうにしてるんなら何よりだわ。前の時よりもはっちゃけてる様だしね。今の場所がアンタにとって良い場所だってのは分かったわ」
「はっちゃけてるってなによ~、失礼ね~」
ケリアさんが気恥しそうにしながらも、シナをつくってくねくねしている。
「それより、その子達が今のお仲間さん? 随分と可愛らしい子達だけど」
オレ達の顔を一人一人観察するように見てくる。
「えぇ、そうよ。まだまだ新人ちゃん達だけどね」
トンっと背中を押されてティフォナスが最初に挨拶をした。
「テイマーのティフォナスです」
それに続いてシュネーがオレを含めて紹介してくれる。
「僕はシュネーで、こっちがファーマーのスノーだよ~」
『初めまして……? どうかしましたか?』
オレとシュネーを見て、名前を聞いてから細い目がカッと開かれた。
「――――っ! いえ、なんでもないわ」
すぐに細めに戻ってニコニコな顔に戻っていた。
でも一瞬だけど、すごく驚いて顔でオレ達を見ていた気がする。
「拙者はガウガブでござる、ガウでもガブでも好きに呼んでほしいんだな」
なんかガブが自分の名前を強調するように言っている気がする。
「この子達にフォレストヒルの事とか教えてあげて欲しいのよ。錬金術師の事とかね」
「まぁケリアの頼みだし、別に良いけど。その代わりに何か買って来なさいよ」
キセルと取り出して、一服吸って煙の輪を広げる。
「あんまりお金は無いですよ?」
「安くしとくわ、簡単な情報料ってヤツよ」
「相変わらずがめついわね」
そうケリアさんが言うと、カウンターから飛び出してきた。
「ちょっと店を閉めるから待ってて~」
『え? 此処ってミカさんのお店なんですか⁉』
「そうよ~、表向きは錬金術のアイテム屋って事になっているわ」
「表向き?」
鍛冶師の人達は自分のお店を持ってる人なんて居なかったのに。
「よしっと、コレで良いわね」
カシャンと重い錠が閉まった音がした。
『えっとなんで暗く……わぅ⁉』
すぐに室内の明かりが全て消えた。
「大丈夫よ、店が地下に移動しているだけだから。っと、付いたわね」
「どういう仕掛けだよ」
「不思議動力……気にしちゃ負けなんだな」
ガウがしみじみと言う。
「創るのは苦労したのよ~、魔科学で作った歯車用意してさ~、土の精霊に協力してもらって、水の精霊や風の精霊とも仲良くなる必要があってね~」
「ほらほら何時もの愚痴愚痴モードに突入しないの」
「おっと悪かったわね。さて、表の顔は錬金術師、裏の顔は情報収集課って幹部よ」
地下室に着いたのか、またすぐに室内が明るく照らされた。
「おぉ~、まさに秘密基地って感じだな」
「アタシの職業は召喚士ってレア職よ。精霊と仲良くなった分だけ力を貸して貰える」
「今日は大盤振る舞いなんだな、オイラと会った時はもっと秘密主義者だったのに」
ガウが何故か気に食わないという態度で、ジト目でミカさんを見ている。
「五月蠅いわよエスケープナイト」
『なに? エスケープナイトって?』
「そのままの意味よ、タンクなのに誰よりも逃げ足が速いっていう通り名」
「それってダメじゃないのガウっち」
「お前、此処でも似た感じのあだ名があんのかよ」
学園でも通り名があるもんね」
「その名で呼ばないでほしいんだな」
ケッと唾を吐き捨てるように言うが、ミカさんは完全に無視だ。
「あら、良いじゃない。勘違いするヤツは多いけど、コレはちゃんとアンタを称賛した呼び名なのだから、カッコイイと思って誇りなさい」
「逃げ足が速いって言われているのに? 不思議な通り名ね?」
「コイツとパーティーを組んだ奴等は誰一人として死に戻りしたヤツは居ないのよ。ただしタンクとして
の戦い方も独特だから組みにくいって批判は多いけれどね」
何それ、カッコイイじゃん。
「ってことは、貴方が不死者のナイトなの⁉ そういう事は早く言いなさいよね」
『また新しい通り名が出てきた』
「ガウっちって以外にも有名人?」
「ただ単にゲームを始めてから一度も死んでないだけなんだな。それで称号を貰っただけ」
「そっから噂が勝手に広まっていったのよ。体格や性格までも美化されていってね」
「噂の一人歩きという恐ろしい怪物に食われたんだな」
「それでさ、此処に来たのも良い縁って事で、お姉さんと仲良くしない」
「はじめっから逃がす気なんてない癖に、そんなんだから狐って言われるのよ」
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