【オン69】イベント騒ぎは大騒ぎ
天の声とでも言えば良いのか、メッセージと共に聞こえてきた。
「あら~、大変な事になっちゃったわね」
ケリアさんは楽しそうに笑って天井を見上げている。
「タイミング的に俺達だよな~、今のってさ」
それ以外にないだろう。自分達が受けた次の瞬間に流れたのだから。
違ったらタイミングかかみ合い過ぎだと思う。
「さっきのって何なの? なんか今までに見た事も聞いた事も無いメッセージだったね」
オレと一緒にキョロキョロしながら周りを飛び回っているシュネー。
「あれは全プレイヤーに向けたメッセージなんだな」
パーティーないだけじゃなくって、全プレイヤーに向けてのメッセージかよ。
『それよりもさ、隠しメインクエストって部分にツッコミを入れるべきでは?』
オレ達が急にワタワタしだしたのを、タムさんが不思議そうに眺めている。
「なんでぇ、どうしたんだ?」
「このメッセージって村人には聞こえないみたいだな」
ますます訳が分からないと首を傾げている。
『すいません、何か書くものってあります?』
とにかく今はほっといて、それよりも目の前の事だ。
「あぁ、あるぞ。ちょっと待っとれ」
浮足立って部屋の奥へといくと、ドタバタと音がしている。
片付けは得意じゃないんだろうな、剣や鎧だって乱雑に置かれ得るんだし。
それはお店の内装を見れば一目瞭然だろう。
「鍛冶師との繋がりが出来たのは大収穫よ」
グランスコートには居なかったから、本当に良かった。
「よく分からないクエストが発生したけどね~」
クリアー条件も良く解らないままで、クエストを強制受注だしね。
「木工と鍛冶、あとは最低でも錬金術師との繋がりが欲しいよな」
まだオレは錬金術師が出来る事って知らないから何とも言えない。
「それはイーゴ氏で良いのではないか?」
確かにガウの言う通りパニアの台座を作ってくれたのはイーゴさんだ。
だが、しかし……あの人が大人しく錬金術師として働いてくれるかと言われると微妙だ。
「あの人は錬金術師って訳じゃないでしょう。主に自分の研究にしか興味なさそうだし」
オレもケリアさんと同じ考えだ。
期待できないなら。きちんとした錬金術師と知り合いになった方が良い。
『錬金術師って何が出来るの?』
「便利アイテムが作れるぞ~、薬だって錬金だしな。肥料なんかも錬金術で作る」
色んな事ができる様になるのか、それは確かに必須な人材だな。
「ほら、持ってきたぞ。なんじゃお主等は錬金術師も探して居るんか?」
タムさんが持ってきた紙をすぐに受け取る。
『ありがとうございます。技法とかやり方を纏めて書いておきます』
「頼んだぜ。お前の言うもんがどんなもんか、儂が試してやるからよ」
もうウキウキした表情のまま、オレが書いているモノをジッと見つめてくる。
かなり気になるらしい。
「タムっち錬金術師の知り合いって居るの?」
「そりゃあ居るさ。横のつながりってのも大事なんだよこういう商売してっとな」
オレの手元を見ながらも、シュネーの質問に答える。
「良い人を紹介してもらえたりしないかな」
「教えてやるくらいなら良いけどよ。アイツは根暗で人見知りってヤツだからよ。会ってくれるかどうかは分からないぜ」
なんで濃い人の知り合いは、濃い人しか居ないのか。摩訶不思議よな。
「それでも良いのよ。私達には錬金術師の知り合いって居ないから」
「つっても今から行っても無駄だぜ。夜行性だからな~アイツ」
錬金術師ってイメージにピッタリの人ですね。
『はい、書けたよ』
「ふむ……なるほど……おい、今から店を閉めるから帰れ」
良かった、ちゃんと読めるモノが書ける様だ。
何度も紙に書かれている事を確認しながら、オレ達を帰らせようとしてくる。
「そんなにすぐに試したいの~」
「あったりめぇだろが、コレで嘘だったらシバき倒してやっからな」
欲望に忠実というか職人魂って感じなのかな。
『頑張ってね。罠が出来たら教えて』
「おう…………って、そうだった。連絡手段の事をすっかり忘れてたな。え~っと何処に置いておいたっけな~。あったあったコレだ」
カウンター下に潜り込んで、何やら凄い漁る様にモノが宙を舞っては落ちていく。
そうして出てきたのが、羅針盤みたいなヤツだった。
「なに、これ?」
中央にトゲが付いていた、魔法陣が描かれている。
「マジックアイテムなんだな」
「コストが高くってあんま使わねぇがな。コレで契約しておけば何処に居てもオメェさんにメッセージが飛ばせるって代物だよ。この中央部分のトゲに少しだけ血を染み込ませてくれ。そうすりゃあ登録が完了する」
オレの目の前にマジックアイテムが置かれる。
『えっ⁉ 刺すの、指を!』
流石に痛いのは嫌なんですけど。ゲームとは言えど。
「僕がやろうか?」
「こいつは儂と嬢ちゃんとの契約だ。しっかり自分でやんな」
ダメダメと言いながら、オレに押し付けるように渡してくる。
「出来れば変わってあげたいんだけどね、そう言われちゃあ無粋な事は出来ないわよ」
「頑張るんだなスノー姫よ」
「ほれ、頑張れ」
もじもじと手をこまねいていると、急にガシッと手首を掴まれた。
『うぅ~、にゃっ⁉』
一瞬の出来事だったが、器用にオレの指先を上手く刺しやがった。
「よし、コレで契約完了だ」
「タムっち容赦ないの」
シュネーがちょっと怒りながら、タムさんを睨む。
「こういうもんはグダグダやってる方がダメなんだよ。ほれ、詫びに儂からの手紙をくれてやるから、それもって錬金術師の所でも行きな」
『にぅ~、教える人を間違えたかもしれない』
ボウガさんよりも容赦ない人だったか。
「だはは、知っちまったんだ後戻りは出来ねぇぜ。まぁ、儂の腕を信じとけって」
「わわ、押さないでよタムッち」
「ちょ、待でござる」
「タロトって根暗嬢ちゃんだが腕は確かだぜ。場所はフォレストヒル門の城下町に居る」
それだけ言い残して、バタンッと閉店の看板が掛かった扉がしまった。
「半ば無理やりに追い出されたわね」
「見知らぬ技術をさっそく色々と試したいんだろ」
「ねぇスノー。なんの罠を作って貰う気なの?」
『え? トラバサミや連動装置的なトラップ?』
「それで何をする気だよ?」
『なにって、家畜になる動物……魔物の確保?』
「確かに家畜は必要だとは思うんだな。作物を育てる畑にも必要でござるしな」
「テイムじゃなくって捕獲なのね。まぁ、確かに数が多くなるんなら捕獲……よね」
「というかそんな動物って居るのかな?」
「鶏とか牛とかヤギって居んのかね?」
「でも馬は居るんだな」
『馬がいるなら、どっかに動物も居るって』
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