【オン62】イベント騒ぎは大騒ぎ
「やっほ~、ケリアん。今日も早くから居るね」
『おはようございます』
オレとシュネーがログインしてすぐに、部屋の中には卓上織りの前に座っているケリアさんが軽く手を振って挨拶をしてくれる。
「えぇ、楽しく過ごさせて貰ってるわよ……それより~、ねぇシュネーちゃん。あの方達って皆のお知り合いさんかしら?」
窓の外を指さして、ケリアさんが体を伸ばしている。
「んぁ? 誰か来てるの?」
シュネーがすぐさま窓へと飛んでいった。
「来てるって言うか、すぐそこに居るって言うか」
頬に手を当てて、ちょっと困った様子のケリアさん。
オレも気になってシュネーに続いて窓辺によって覗き込む。
『外に居るの………………あの、屈強そうなお爺ちゃんと可憐な美女は何方?』
初心者装備を着こんだ、スラッとしつつも筋肉質な老人が一人と、エルフみたいな見た目をした肌の綺麗な女性が一人。
「あのね、それを私が聞いてるのよ」
ケリアさんも一緒になって窓から彼等を覗き見ている。
「ふぁ~、よっと。ログインの感覚もだいぶ慣れてきたな。って、皆どうしたんだ?」
遅れて樹一が室内に現れた。
「ティフォナっち~、知らない人が居るよ~」
『しかも、ウサギさんとハチさんを引率してる』
ケリアさんと一緒に、今度は三人で窓の外を指さして言う。
「はぁ、何言ってるんだお前ら、此処はホームなんだから入れないだろう」
「だから、引率してるんだってば。別にホームに入らなかったら良いんだし」
お爺さん達はホームのギリギリ外に居る。
「ティフォナスちゃんも見てみれば良いわ、ほら自分の目で確かめなさいな」
ズイズイとケリアさんがティフォが背中を押して、窓辺まで誘導する。
「なんだっていう……んだ、よ……………………ありゃ、なんだ?」
ほらね、奇妙な光景でしょう。
「あのウサギさん達が大人しくっていか、崇める様にしたがってるよ」
ウサギ達は大人しく従っているどころか、まるで神様と称える様にすり寄っている。
『やってる事は、畑の講習会って所かな?』
擦り寄っていないウサギや蜂は、一生懸命に畑を耕し、土を柔らかくする為の土ふるいを使っていた。
蜂達は水撒きをより丁寧に、細かく撒いている様子だ。
「畑……まさか、爺ちゃんか⁉」
『「えっ、えぇぇぇ⁉」』
昨日の今日で、この場所のウサギさんと蜂さんを従えたっていうのかよ。
「あっちの女性は、ハナ婆なんだな?」
「年齢を偽り過ぎじゃないか⁉ 誰だよあの美女は!」
普段の言動でも、けっこう可愛らしいお婆ちゃんだけど。確かに見た目を言われてしまえば、すっごい若いよね。
「でも、どことなくティフォナスちゃんに似てなくも、ないわね」
『体系は、ある程度なら弄れるんだもんね』
「ハナ婆って、若い時はすっごい美少女だったんだな。きっと……エルフと言われても不思議じゃないんだな」
騒いでいた声が聞こえたのか、二人はこちらに向かって大きく手を振っている。
「こっちに気付いて手を振ってるよ」
「とにかく、挨拶をしましょうか……悪い人達じゃないんでしょう?」
「あぁ、アレは俺んとこの爺ちゃんと婆ちゃんぽいからね」
みんなで一緒にホームの家からぞろぞろと外に出る。
「ふぉふぉ、どうじゃこの肉体は。こっちはえぇのう、体が軽い軽い」
お爺ちゃんが凄くぴょんぴょん飛び跳ねると、周りのウサギさん達も一緒になって飛ぶ。
「おや、皆さんお揃いで……こちらではハーナと申します」
きっちり丁寧なお辞儀をするお婆ちゃん。
「ワシはダイチじゃ。よろしく頼むぞ」
反対に片腕を上げて力こぶを見せて、挨拶をしてくるお爺ちゃん。
「初めまして、私はエフケリアです。この子達には良くお世話になっている者よ」
「ほう、アンタが服職人を目指しとるもんか、よろしく頼むぞい」
がっしりと握手して、お互いに笑い出すケリアさんとダイチ爺ちゃん。
「爺ちゃん達はなんだって此処に来たんだ? つうか、誰からか聞いたのか?」
確かに気になるね。
「基本的な情報は小鳥ちゃんから聞いてましたよ~。ゲーム内での事は始めた時期や職業なんかの噂話を集めれば、大体の場所は分かりましたからねぇ」
さらっとハーナ婆……ハーナさんが答えた。
一瞬、寒気が走ったぞ。
「……ティフォナ妃。お主の親族は何者なんだな」
「俺が聞きてぇよ」
きっと誰もが聞きたい事だよ。
「にしても、樹一はみとの血を色濃くついだんか、女顔のせいかそういう格好がよく似合うではないか。若い頃のみとのようじゃ」
「こらこらダイチさん、此処ではゲーム内の名前で呼ばなきゃダメよ」
「ぬ、そうじゃったな。その辺がイマイチなれんな」
腕組みしながら、反省とばかりに唸っている。
『それより、よくコレが樹一ってわかったね』
「リアルよりも、かなり可愛くなっちゃってるもんね」
シュネーと一緒にティフォを指さして言う。
「いやなに、小鳥ちゃんからデータを貰ってたからね。すぐに分かったよ」
そう言えば、畑に遊びに行ったときに色々と小鳥ちゃんに教わりながら撮ったっけ。
ティフォに横目ですっごい睨まれて、サッと顔を逸らせた。
悪気は無かったんだよ。
「その隣を仲良く歩いとるチビちゃんなら、言わずもがなじゃな。それに雷刀君もな」
「まぁそれは良いとしてさ、コレはどういう状況なんだ?」
「あぁなに簡単じゃよ? 畑仕事しとるウサギや蜂という珍しい子達が居ったからな。一緒になって畑を拡張していたんじゃよ。そしたら、なんか知らんが懐かれたんじゃ」
「素人同然の動きでしたからねぇ、そこをダイチさんが厳しく教えていたら、いつの間にやらこんな感じになってしまったんですよね」
「腰も入っとらんし、土はただ耕しているだけじゃったからな。最低でも土ふるいぐらいはせんとな、良質な土にならんじゃろう。堆肥だって上手く混ざっておらんかったしな」
「ゲームでそこまで細かくやってる人は、少ないと思うけど……そこまでやると、どうなるのかしらね。見た感じは……けっこう差が出るのね」
「凄い凄い、ふっかふか~」
『……なんか、この辺の土レベルっていうのが上がってる』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます