【オフ61】イベント騒ぎは大騒ぎ


  ==★☆★【視点:樹一】★☆★==



「爺ちゃん達が戻って来るまで、暇だな~」


 大まかな設定も終わって、後は自身がゲームにログインして行うしかない。


 その為に、爺ちゃんも婆ちゃんもベッドで横になり、ヘッドギアを装着している。


 流石に座りながらやらせるのは、年齢的にもキツイだろう。


 この辺の設定もややこしいんだけど、流石は双子ちゃん達と言うべきか、五分と掛からずに全ての設定をし終わっていた。


「セットアップやチュートリアルが終わるまで、あと最低でも二時間?」


「街やフィールドを出歩くでしょうから、見積もっても三時間くらい?」


 おまけに大体の計算も出来るらしい、ゲームを始めた時の時間なんて覚えてないからな。


 休憩に起きたら、いつの間にか時間が経過している感じだったしな。


「それにしても、お爺ちゃん達がズィミウルギアをやるとは思わなかったよ」


 邪魔をしないように、敷布団で横になっている爺ちゃんと婆ちゃんを、静かに見ている。


「まっ色々と楽しみたいんだろう。主に友達に自慢するのが目的だろうけど」


 馬鹿正直に昨日の事を話すこともないだろう。昨日のはぐらかすように最初に言っていた事なら言っても問題ないはずだ。


 俺から話が漏れたと知れたら、どんな仕返しを受けるか分かったもんじゃないしね。


『ハナ婆ちゃんもノリノリだったもんね』


 婆ちゃんがあんなにも話に乗っかってくるのが、意外だと言える。


 ちょっとごねるか、興味ないと言われて終わるかなって思ってたんだけど。


 もしかして、昨日の会話を聞かれてたんじゃないだろうな爺ちゃん。


「なんか妙に若返った感じに見えたんだな」


 俺は横目で婆ちゃんを見ながら、知ってて黙っていた気がしてならない。


「にしても、良かったのか? 小鳥もやりたがってたろ?」


 少し気になったのが小鳥だ。翡翠がやってるんだし、すぐにでも飛び込んで来るんじゃないかと思ったのに、意外にも冷静だった。


 駄々を捏ねるほど子供ではないけれど、少なからずショックは受けると思ったのに。


「え? あ~うん。私はもうちょっと後から入るから大丈夫だよ」


 急に余所余所しい感じで、視線が泳いでいる。


「そうそう、アタシたち一緒だよね~」


「一緒に楽しむから、一人だけでやらないみたい?」


 双子が左右からがっしりと腕に抱き着いて、ニコニコと微笑んでいる。


 なるほど、約束があったから我慢したのか。




(抜け駆けは禁止?)

(やっぱついて来て正解だったね)

(べ、別にそんなことしないわよ)

(どもった?)

(きょどったね)

(いいから、離れなさいよ暑苦しい)





 そんなヒソヒソ声が聞こえた気がしたが、俺は何も聞こえない……事にした。


 アレは関わってはいけないモノだと、俺の本能が告げている。





「珍しいんだな~、小鳥嬢ならすぐにでも飛びつくと思ったんだな」


 何も聞こえて居なかった雷刀が、すぐに俺が最初に思ったことを言ってくれる。


 助かった、あの内緒話が耳に届いてしまった俺には、その反応がもう出来なかった。


「やだな~、私だってそこまで子供じゃないよ」


 本当は抜け駆けしてヤル気、満々だったろうに。我が妹ながら、あの猫かぶりは凄いな。


「まぁ全部を揃えるとなると、お金も掛かるからな。仕方ないだろ」


 話しを合わせて、自然な感じで入り込めただろうか。


『早く皆で一緒にやりたいね』


 笑顔で言う翡翠に、双子たちが甘えるように飛びついて行く。


「うん、色々と協力する?」


 言動的には遅い感じがするのに、行動はいち早く葉月ちゃんが一番にくっついている。


「あっ! 葉月ズルい。私も一緒だからね」


 続いて桜花ちゃんが葉月ちゃんとは逆側に飛びついていた。


「ちょっと二人ともひっつき過ぎだって言ってるでしょ。離れなさいよ一定距離くらい」


 一番遅かったのが我が妹か。きっと恥ずかしさで動けなかったな。


「微笑ましい光景でござるな~、樹一妃」


「アレは、微笑ましいのか? 翡翠が揉みくちゃにされている様にしか見えないが?」


「眼福でござるよ~」


「あ、お巡りさん――」


 何も操作はしていないけど、携帯電話を耳に当てる。


「樹一妃、それはいけないんだな。冗談でもいけないんだな、心に闇を抱えてしまう」


 ならその、変に溶けた表情を戻せ。犯罪者と言われちまうから。


「それよりも、この雑誌って意味あるのか? 情報なんて載って無いのに」


 小鳥が持ってきてくれた雑誌を、もう一度開いてみるが、文字何て無いも同然だった。


「何を言ってるんだ樹一妃よ。情報ならしっかりと載っているんだな」


「は? 何処に乗ってるんだよ。全体的にスクショの写真しかないぞ」


 写真が全面い載っているだけで、それ以外の説明文は無いに等しい、書いてあるのは最近話題沸騰の最新ゲームという売り文句だけだ。


「ちっちっち。それが情報なんだな。しかも公式が許可を出したモノなのだよ。きっと上位の人達からすれば皆が気付いてるんだな」


「なにが情報なんだよ?」


「樹一妃はただの戦闘しているスクショとして見ているようだけど、実際にはこんな構図の戦闘は撮れないんだな」


『普通に戦闘をしている様にしか見えないけど?』


「よく見てみるんだな、基本パーティーは全員で六人で一グループなんだな。そしてアライアンスでパーティーは一グループが四チームの二十四人。コレが限界なんだな、まぁ他に組み方が無いわけじゃないんだけど、この写真だと全員が一グループとして三十人以上」


『バグ?』

「バグだろ?」


「違う違う、このイベントは多分だけど、防衛戦、或いは陣取り的な要素のゲーム内容ではないかと思うんだな」


「防衛戦か陣取りね、なんでそう思うんだ?」


「防壁の様な建物に、モンスターの大群が写真の隅に写ってるんだな。モンスターだけじゃなく人同士がチラホラと争ってるのが、少し気になるのもあって陣取りなんだな」



「なるほどね~、カッコイイ戦いシーンってだけじゃないのね」



「他にも細かく見て行けば、色々と分かるかも知れないけど。今のオイラ達じゃあコレぐらいの想像しか出来ないんだな」




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