【オンライン】44:役割、開拓、初めての準備




『貴方がイーゴさんで、間違いないですか?』

 顔半分しか見せない人に、恐る恐る聞く。

「正解……で? どちらさん?」

 警戒心全開で、物凄い目でこちらを窺っている。

「ボウガさん達が、力を借りるなら貴方が一番だって教えて貰ったの」

 シュネーがオレの拘束解いて頭の上に乗っかって、陽気な声で言う。

「力を借りる? 自分にですか?」


 オレ達というより、ケリアさんや後ろの二人を思いっきり警戒している気がする。


「えぇ、トワちゃんやウラさんから教えて貰ったのよ~」

「ふ~ん自分をね――っ⁉」


 そして、観察対象がオレ達に映ると、シュネーを凝視して固まってしまった。


「えっと、ボクに何か?」

「妖精、だとっ⁉」


 そういえば妖精だった、ねシュネーの種族。


『オレはスノーです、こっち小さいのはシュネー』


 とにかく、会話が出来そうなので自己紹介をした。


「私はエフケリアっていうのよ。よろしくねイケメンさん」

『それで後ろの方にいる綺麗な子がティフォナスと、ぽっちゃりしてるのがガブ』

「あ、そう」


 本当に冒険者に良い印象が無いんだ。興味が全く無いご様子です。


「全然興味ないみたいね~」


 ケリアさんは、まだ意識してもらっているようで、ほっとしているようだった。


「ボクには興味津々なのに?」


「失礼、まさか生きている内に妖精族に会うとは夢にも思わなかったものでね。お嬢さん方に立ち話では悪いですね。どうぞ、お入りください」


 初めに会った態度とは打って変わって、シュネーとオレには客として扱ってくれるらしい。ついでにケリアさんにもきちんと敬意を払っている。


「拙者らを無視しないで欲しいんだなっ!」


 未だに攻撃を仕掛けられていて、それをガブは紙一重で全て回避している。


「俺を巻き込まないで貰えるか? スパイク、ほら危ないからこっちおいで」

「ティフォナ氏っ⁉ 薄情、でっ、ござる、ぞぉおぉ⁉」


 そそくさとスパイクを抱え、ガブが狙われている範囲からティフォが逃亡した。

 あの躯体で、しなやかに躱す姿は何とも言えない。

 だが、凄いの一言だけは、言える。


「とりあえずイーゴさん、彼女等と話だけでも聞ける位置に入れてくれないかな?」


「仕方ないな、庭に回れそこまでなら入って良い。彼女等に免じでそれくらいなら許す。確かに女性だけを家の中に招待する訳にはいかないからな」


 面倒そうなため息を漏らしたが、邪険にする事無く庭へと案内してくれるようだ。


「ふぅ、助かったでござるぅ⁉」

「君、よく彼等の攻撃を躱せたな」


 改めてガブに近付いたイーゴさんが、驚いた顔でガブの全身を見ていた。


「ふふふ、拙者は普通のタンクではござらんからな」


 激しい攻撃だったのに、一撃も攻撃が当たっていないらしい。


「なんだよ、回避盾って。周りの仲間のこと考えてんのか?」

「ふっ、拙者に合わせられない要では、一流の冒険者は名乗れんよ」

『つまり、今まで一人で活動してたんだね』

「ボッチのソロプレイって騎士って、寂しくない?」

「あ~、変り者のタンクってアナタの事だったのね」


 言葉の刃が全身に刺さったようで、胸を押さえながら、悶えて苦しんでいる。


「止めてやってくれ、言葉だけで体力が減ってる様に見えるから」

「凄いんだな、精神攻撃の耐性は、オイラってば持ってないんだな」


 そんなオレ達のやりとりを見て、イーゴさんの今まで仏頂面が崩れた。


「……他のヤツ等とは、違いそうだな。ほら、飲み物だ」

『あっ、ありがとうございます。おいしい』

「コレ美味しいね、紅茶っぽいけど」

「初めて飲むわね、こんなに美味しいのに飲んだことないわよ」


 イーゴさんはオレ達に配り終わると、外に居る二人の分も渡しに行く。


「拙者達にも、良いのでござるか?」

「あぁ、彼等が認めたみたいだしな。飲ませても問題はないだろう」


 そう言って、ガブの後ろの木々を見る。


「彼等って、彼等……ですかね?」


 ティフォが真後ろにある木を指さして言う。


「あぁ、君はテイマーか……ほう、針鼠をテイムとはね。中々に良い趣味をしている。おっとすまない、自分に用事だったね先ずは話しを聞こう」


『えっと、ボウガさんからの依頼で中央都市から此処までの道を造りたくて――』


 とりあえず、今までの経緯を離した。




「ふむふむ、とりあえずの話は分かった。なぜ自分を頼れと言ったのかも大体の察しは付くが……さて、どうしたものかね」


 イーゴさんは眼鏡の淵に手を当て、考え込む。


『難しい、ですか?』


「……ボウガさんに、仮とはいえ認められた君達なら、こなせなくもないだろう。ただ、簡単ではないぞ。それでもやるかい?」


『もちろんです』



「即答で返すか、良いね。気に入った」




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