【オフ】22:ゲームとリアルに繋がりを




 オレ達はいま樹一のお爺ちゃんの畑仕事を、お手伝いをしている。

 と言ってももう殆どやる事が無いのだが、本命は別にある。


 オレの腕に付けられた、可愛らしい腕時計を使う為に此処へ来た。


 見た目はただのデジタルな腕時計なのだが、文字盤を指先でタッチして横にスライドさせると、ズィミウルギアのゲーム世界で見た様なステータスやアイテム表示の度に出していた電磁盤と同じ様なモノが飛び出してくる。


 ただゲーム世界と違うのは、その電磁盤を触っても反応はしてくれない。

 触った所で幻や幽霊みたいにスルっと空を掴むだけだ。


 ……幽霊が本当にそうかは知らないけれど、とにかくそんな感じ。


 腕時計の周りにあるボタンを、カチカチと回転する端の部分で操作をする。


 葉月ちゃん曰く、

「AR技術はまだまだ難しい事柄が多いらしい、ゲームセンターに行けば大掛かりなモノがあって、そこでサバゲーなるモノが行われているらしい」

 そのおかげか、VR技術は飛躍的に進歩したとも言っているが、正直、オレには何を言っているのか話の半分も理解は出来ていない。


 分かるのは葉月ちゃんが嬉々として語りだしていた姿くらいだろう、本当に好きなんだなって誰もが解る程に生き生きと話していた。

 桜花ちゃんが良い感じでツッコミを入れてブレーキを掛けてくれなければ、永遠と話していただろと全員が思ったほどだ。


 とりあえずその電子盤を野に咲いた花に向けて枠内にいれ、カシャっと写真を撮る。ぴんっ!――っという甲高い音が鳴り、ジャガイモの種が画面に映し出されて消えた。


『これで良いの?』

「「オッケーです」」


 双子ちゃんが同時に、それも良い笑顔を向けて親指を突き立てて言う。


 葉月ちゃんだけは、すぐにはっとした顔をして、恥ずかしそうにしたお向いて俯いてしまい、もじもじとしながら小さい声で、


「やってしまった、恥ずか死ぬ」


 なんて言っている。

 他にも色々と機能があるのだが、今のオレには使いこなせない。


 分かっているは、フレンド登録した者をさっきの花を撮った時のように移すと、ズィミウルギアのプレイキャラクターとして撮影が出来る。


 だから今の樹一にコレを向けて撮ると――、

「なにしてるのよ?」

 腕時計を構え、樹一を捉えれば畑に水を撒く清楚な美女がそこに映る訳だ。


「え、コレってお兄ぃ? お兄ぃのゲームキャラ?」

『うん、そう。びっくりだよね~』


 そんな事を言いながら、一枚記念に撮影する。


 樹一や双子ちゃんが言うには、この機能はオフ会?

 なるモノに用いられるらしい。

 実際にこうして現実にゲームキャラの姿が映るのも面白いなと、今なら思える。


『とりあえず、保存、保存っと』

 まだちょっと使い慣れない。


 ちなみに、さっき撮った花は種に変える事が出来るようになり、ホームへ送られるらしく、そこで村人や使役した獣達に渡すことが出来る。


 あぁ、だけど売っている花は無理らしい。


 オレが最初に疑問に思って聞いたところ、基本はゲームを管理しているAI達が第一に調べて、分かりにくいモノを運営管理者が調べるらしい。


 カメラを撮った場所も記録されるらしいので、結構バレるそうだ。

 もちろんやり過ぎれば運営側からペナルティーを受ける。


 自分で育てたモノは大丈夫だそうだ。あとは、勝手からしばらく育てたモノでも大丈夫、ちょっと観察記録的なモノを撮る感じだけど。


 ただ、その分の種や花の素材が貰えたりする。

 他の機能では、動画だろうか。


 料理や物を作っている所の撮影。

 これは撮影自体は保存しなくてもただ映したモノでも良い、ゲームの子達が処理してくれるので運営側に一々個人情報を出すことはない。


 それをするだけで、料理をしていれば料理スキルが上がり、モノ作りをすればその作ったモノに関連するスキルが上がる。


 自分を撮るのに道具を一々外す事もなく、自分を撮るだけなら付けたままでも出来る。ちょっと狭い個室くらいの広さ、オレは行ったことがないが満喫? なるモノの個室位の広さを映し出すらしい。


 あとは、なにかあっただろうか。

「お~い、良いもんが手に入ったぞ」

 樹一のお爺ちゃんが大きめの袋を掲げて持ってきた。

「なんだよ、それ?」

 樹一は見当がついているのだろうか、物凄く嫌そうな顔をして服るを見つめる。


 オレも覚えがあるのだが、そこまで嫌じゃない。


 ただ、いま此処に居る女性陣には辛いかもしれない。


 あまり畑の手伝いをしてこなかった小鳥ちゃんは、どうやらパッと見ただけじゃあ分からないらしい。きっと見たら卒倒するな。


 お母さんは、静かに、しかし一目散に逃げだしていた。


 そして、分からない女の子三人はというと、

 ガバッと袋を開いた中を覗いて、悲鳴を上げてお母さんの方へと逃げていく。


 執事さんとメイド長さんは、

「ほう、大きいですな」

「りっぱですね」

 と、平然と見ていた。


「ほれ、こいつが嬢王バチだぞ」


 そう言って、死骸の嬢王バチをオレに見せてくれる。

 取り出した大きいハチの巣と一緒に、ついでと写真に収めてしまった。


 これが、後々にちょっとした事件を起こす事とは知らずに。

 ピコンっ! という音を鳴らし、何かを読み込んだ。


 この時は知らなかったんです、生き物も読み込む事が出来るだなんて。



 あぁ、そういえばコレの名前は【リルギア】っていうらしい。


 正式にはコードギアという。まぁ、まんまだよね。


 腕時計型になったのは樹一のおかげ。

 他にもなんか可愛らしい小物がいっぱいあった。


 ズィミウルギアだけじゃなくて、色々な所で使われているモノだそうです。


 ゲーマーなる人達は持っていて当たり前のモノらしい。

 最近じゃあ誰もが持っているとか。



 ――オレは知らなかったけど。




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