【間話】甘えん坊な妖精と畑作りの行方
ヘッドギアを外すと、まず目に飛び込んできたのは小鳥ちゃんの笑顔だった。
「どう、楽しっかった?」
まだちょっと霞がかった視界と、少し顔が熱く夢見心地な感じだ。
二、三分くらいそんな感じでぼうっとしていた気がするが、徐々に意識と手足の感覚が戻ってくる感じがする。
==翡翠がぼっとしている間の出来事。
「どう、楽しかった?」
「……顔が近い、むやみやたらに近づかないでよ」
「ん? もしかして琥珀ちゃん?」
一瞬にして張り付いた笑顔になった。笑顔は崩さず表情は変わらないのに声色とか雰囲気が違う、最初の一言の時みたいな柔らかさは無い。
「そう、初めまして、かな? ボク的には興味ないからよく覚えてないんだよね」
「そうだよ~、初めまして。私は秋堂小鳥。翡翠ちゃんと親友関係にある樹一兄さんの妹なの、よろしくね」
「あっそう、よろしく。別にどうでも――」
「それと、今度は私もそのゲームをやってみようと思うんだ、その時はよろしくね」
「……そう、やるんだ」
「うん、やるよ~。その時は仲良くしてね」
「その時は、仲良くするよ~」
ニコニコとお互いに笑顔のままお話しは続く。
「あ、そうそう、琥珀ちゃんに聞いてみたかったんだけど、昔の翡翠ちゃんって知ってる?」
「よくは、知らない、けど?」
「そっか、アルバム見れば分かるだろうけど、よく私とかお兄ちゃんと写っているのが多いかな、こんな感じでさ、琥珀ちゃんにも幾つかあげるね。多めにあるから」
小さな男女が仲良く腕を組んで写っている写真を渡してくる。一人はもちろん翡翠、もう一人は小鳥、お花見をしているのか、満開の桜の下で撮られた写真のようだった。
琥珀がその写真をジッと眺める、少し体を解すように伸びをしてから部屋の一画へと向かって、写真をノートにしまう。
「ちょっと前まで翡翠ちゃんの話しで盛り上がっててね、今度は琥珀ちゃんも参加する?」
「考えておく」
琥珀はそっとベッドに戻って、チラッと小鳥を見る。
「不本意、本当に不本意だけど。後はよろしく」
「うん♪、任せてよ。今は、お互いに争っている時じゃあないしね」
「よく言うね」
「え~、だって勝負を始めるにしても有利に立ってないとね、琥珀ちゃんなんて一番に油断ならない感じじゃない? いつの間にか不利になっていました、なんて笑えないし」
「……ま、よーいドンでスタートなんてことは無いしね」
「そゆこと~、はいはい、琥珀ちゃん~、意地になってないで翡翠ちゃんに変わってね~」
翡翠が寝ている間に色々な所で話し合い、皆で決めた唯一のこと。
彼……彼女の本当のリハビリは始まったばかり。
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