第一章、一幕:友と仲間とゲームの世界
【オンライン】02話:不安の始まり、一人じゃないこと
「は~い、どもども。特注、発注、特別プレゼントですよ~」
「は~い、どもども。特別、出張、最高のセッティングに来ましたよ~」
息のあった双子が騒ぎながら、玄関で踊る様に喋る。
二人ともオレより少しばかり背が高い、二人とも童顔なのは変わらない。
「すまない。この子達が無理やり付いて来てしまってね」
無駄にダンディでマッチョな大男が保護者なんだろう。
「ワタシは桜花(おうか)」
目元はたれ目、気怠い雰囲気を醸しながらも笑顔は明るい。金髪の左サイドテールで肌は白く透明感のある綺麗さだ。
「アタシは葉月(はづき)」
目元はキリッときつく、声は元気が良いが表情は面倒そうな顔をしている。銀髪で右のサイドテールで肌は健康そうな艶と色である。
「そして私は、咲沢幸喜(さきざわ こうき)。この子達の父親です」
「そして、そして。このズィミウルギアを作った人ですの」
「そして、そして。このズィミウルギアの生みの親なのです」
この親子、ノリが良いな。
娘につられる様にして、胸を張って自己紹介をしている。
「それじゃ、私達は繋げてくるね」
「それじゃ、セッティングを済ませてくる」
そう言ってオレの母さんと父さんを連れていってしまう。
なんか、楽しそうに話しながら二階へ向かって行く。
「ゆ……いや、翡翠君で良いのかな」
双子が居た時の雰囲気とは違い、ジッとこちらを見てくる。
『えっと、なに……かな?』
オレが良く分からないという反応をしていると、幸喜さんはしゃがんでオレと目線を同じにしてゆっくりと口を開く。
「娘達は君の詳しい事情は知らない……教える訳にもいかんしな。だが、二人は君に感謝している。それは私も同じだ、感謝なんてもんじゃあないけどな」
オレの手を握って何度も小声で「ありがとう」と頭を下げられた。
その様子を小鳥ちゃんと樹一は黙って聞いていた。
決して幸喜さんの涙を見ないよう気を使いながら。
♦♢♦♢
「お父さん、終わったよ~」
「お父さん、確認お願い~」
オレの部屋らしい場所から双子が顔を出して呼ぶ声に、「はいは~い」と嬉しそうに駆け出して二人の元へと小走りに向かう。
それに続くように小鳥ちゃんも続いてオレの部屋に入っていく。
『ねぇ、なんでオレが初めていく部屋にさ、オレが最後に入ってんの?』
「き、気にするな」
オレの部屋は一人部屋にしては広い。好きな緑色の可愛らしいカーテンやベッドと可愛らしい装飾で飾られている。
可愛いタコやクラゲのぬいぐるみの数々。
この子達はオレがゲームセンターで撮ったモノ、偶に抱いて寝たりしている。
白いアザラシの大きなぬいぐるみは抱き枕の様にして使っていたヤツだ。
病院でも癒しになってくれていた、イカの抱き枕もある。
そう考えると、部屋の装飾以外は以前からオレの部屋に在るものだよな。
タコのぬいぐるみの足をフニフニ遊びながら、デスクトップパソコンをカタカタとプログラムの様子を見ていく幸喜さんは、何となくイメージに合わない背中だ。
「うん、オーケーだ。流石は私の娘達だな」
二人の頭を撫でて、二人は「えへへ」と照れている桜花ちゃんと、照れくさそうに細目でそっぽを向く葉月ちゃん。
「では、コレが君のヘッドギアになる」
色はクリアグリーンのヘッドギアだった。
「君は少し特殊だからね、テスターという事でもあるが基本的には、他のプレイヤー達と変わらないから安心してほしい。まぁ、ちょっと特殊なヘッドギアだがね」
『特殊?』
「あぁ、ゲームを始めれば直ぐに分かるさ」
そう言われて、ヘッドギアをそっと胸元に渡される。
オレはジッとヘッドギアを眺めて、キョロキョロと皆を見渡す。
「大丈夫だ、俺も一緒にやるからさ」
樹一がいつの間にかカバンを持ち出し、ゴソゴソと中を探ってオレのとは色違いのヘッドギアを取り出して見せてくれる。
「大丈夫、きっと楽しい世界だよ~」
「大丈夫、きっと楽しめる世界だから」
パンッと双子ちゃん達がお互いに手を合わせて、
「「安心してズィミウルギアの世界を楽しんで」」
カポッとヘッドギアを被せられる。
優しい声で両耳から「「行ってらっしゃい」」と声を掛けられた。
《スキャン中―― スキャン中……――》
☆☆★☆☆★☆☆
「は~い、初めまして~。もう目を開けて~」
目の前から声が聞こえる。
周りを見渡してみると、知らない女の人が一人居るだけだ。
母さん達や樹一達は居ない。
一瞬、雲の上に居るのかとも思ったけど、どうやら部屋が雲の様な絨毯があるだけでそれ以外は何やら陣っぽい術式が書かれた様なモノが広がっている。
「あら、可愛い子が来ましたね、では――」
「はいはい、貴女の出番は此処までです」
「はいはい、貴女の出番はありませんよ」
空中からチャックのように開いていくと、二人の女の子が落ちてきた。
しかも、間近にいる女の人の頭上から出てきた。
多分、アレはワザとだろう。
二人に潰されカエルのような鳴き声を出して潰れている。
「ちょ、ちょっとなぜ貴方達が出てくるのですか」
「この子は私達の管轄でしょ~」
「この子は私達がお世話するの」
「良いじゃないですか、たまには私にも可愛い子を導きたいです」
「「他の子だったら別に良いけど、この子は特別。お姉ちゃん達からお願いだからダメ~。それにマスター達にも言われてるし」」
「じゃあ次の子は、どんな子が来ても私ですからね」
「はいはい、別に良いよ~」
「はいはい、私達には関係ないし」
あの女の人可哀そうに、完全にあの双子の子供に遊ばれている。
涙目でチラチラ名残惜しそうに、オレの方を見て異次元空間を出して出ていく。
そんな後ろメタそうに、オレを見られても困る。
それにしてもこの双子、なんかさっきの双子に似ている。
「「ふふ、その顔は、お姉ちゃん達にあった?」」
何を言っているんだろうと首を傾げていると、また笑われる。
「私は桜花姉様のデータが元ですので似ているのも無理はないかと」
「私は葉月様のデータが元ですので、似ているのも無理はないかと」
なるほど、どうりで似ている訳だ。
「おっと、この事は秘密でお願いしますね」
「えっと、コレは内緒でお願いしますね」
人差し指を口の前に当てる、二人で全く同じポーズをした。
「「さて此処からは真面目に責務を果たしましょう」」
彼女達が前に手を翳した。
すると電子音が鳴ると、空中に電子版の様なモノが出現する。
「「この世界はズィミウルギアという世界です。コレが世界地図ですが、いま分かっている範囲の地図ですので分からない範囲は、こうして白い靄で見えなくなっております」」
渡された地図をジッと見ていると、急に耳元から、
「へぇ~、分からない部分がまだあるんだね~」
小さい妖精がひょっこり顔を出す。
なんだコイツ!
「おぉ、驚いてるね。まぁ、ボクもちょっと驚いてるんだけどね」
手のひらサイズの妖精がオレの周りをちょろちょろ回る。
「「驚いてるね二人とも。マスターから贈り物です。二人で楽しめる様にって」」
オレの頭にちょこん乗って、やっと落ち着く妖精ちゃん。
「ボクの名前は琥珀だよ、やっと会えたね」
――琥珀って、あの琥珀かっ!
頭の上に載る妖精を鷲掴みにして顔の真ん前に持ってくる。
「ぐふっ、ちょっと苦しいってば」
慌てて力んでしまった手を緩める。
それでも離さないように本当かを聞こうと、口をパクパク動かす。
それでも声は出なかったけど。
すぐに琥珀はオレが何を言いたいのか理解してくれたのか、微笑みながら、
「本当だよ、ボクは琥珀。君は翡翠だよね」
オレの顔をペタペタ触りながら答えてくれた。
ウキウキ笑顔で聞いてくる琥珀の言葉に、オレは何度もコクコク頷く。
目を何度もパチパチと瞬きをする。
「「まぁまぁ、積もる話もあるだろうけど。まずはコッチね」」
双子がパチンと指を鳴らし、オレの周りに魔法陣を出す。
丸い輪がオレを包むように現れる。
「体重、胸や髪の色と変えられるわ、体型や見た目年齢の変更も可能。でもね、性別や身長は変えられないの」
「このゲームに慣れないうちに大きく変えちゃうと、リアルとゲーム世界の感覚が違い過ぎて支障をきたす場合があるからね」
今の状態はリアルモジュールでそのままの状態らしい。
――っていうか、身長は変えられないのかよ使えないなっ!
まぁ、胸は邪魔だから無くって良いや、そっちの方が違和感ないし。
髪の色は淡い緑で良いかな、瞳の色もそれに合わせよう。
性別も変えられないとは、ちょっとショックだぞ。
「「パパっと決めるね。琥珀ちゃんも自分のキャラデザはちゃんと考えてね」」
「は~い」
妖精姿の琥珀にもオレと同じ様な輪が体を覆っている。
「「次にキャラクターネームです。本名は使えませんのでご了承ください」」
本名は使えないねぇ。まぁ、色々とあるのかな。
「「一度決めたらその後の変更は出来ません、きちんと考えてください」」
そう言われても特に決めて来てない。
ここは安直だけどコレで良いかな。
自分の前に出てきているモニターに名前を打ち込む。
「翡翠さんは【スノー】さん、ですね」
「琥珀さんは【シュネー】さん、ですね」
双子は空中に出ている電子盤に触れて、ピッピッと何やら作業をしている。
「ここまでが基本設定です、次は特殊な応答になります」
「だから、良く考えてお答えくださいね」
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