終末世界、魔女の旅

水樹 修

プロローグ

黒い三角帽子とマントが目立つ、魔女を紹介するお話

 十年以上前、世界中のあらゆる国は核戦争で滅んでしまいました。

 人も自然も建物も、ありとあらゆる物が残骸に成り果てて、残ったのは少数の人間と、何も無い荒廃した世界だけでした。

 そんな荒廃した世界で生き残った人間達は、小さなコミュニティを作って集落の中で必死に生きていました。

 こんな残酷で険しい世界で、村や集落から離れて外を出歩こうなんておバカさんは今の世にはそうそういません。理由は言わずもがな、生きていけないからです。野生化した肉食動物や野党、更には恐ろしい魔物が出没する事のある外は、まさに地獄そのものだったのです。


 しかしそんな残酷な世界で、肉食動物が野党の肉を貪る中、不意に強く風を切る音が聞こえたと思うと、謎の影が通過していきました。しかし地上には肉食動物と、肉塊に変わり果てた野党しか居ません。では何処に居るのか。……そう、空中でした。空には箒に座った少女が小さく鼻歌を歌いながら飛んでいたのです。

 彼女はエレネスティナ、親しい人からはエレナと呼ばれる彼女は15歳の少女。少し幼さを感じる顔立ちと、限りなく白に近い薄紫色の長く腰まで伸びた髪、ちょっと大きめな三角帽子、黒いマントが特徴的な子です。

 ですが彼女は普通の15歳の少女ではありませんでした。

 この少女は……実は魔女なのです。彼女の胸元で輝くペンダントは、紛れもなく最高位の魔法使いだけが手にする事が出来る、二つ名を名乗る事を許された代物でした。

 つまりこの少女、エレナはとても強いのです。野党や肉食動物はおろか、魔物にさえ遅れを取る事は無いでしょう。

 さて、ではいったい彼女は何者で、どこに向かってるんでしょう?。

 答えは簡単です。彼女は旅人なのでした。そして向かう先は、もちろん決まってないです。

 では、そもそも何を目的にして旅をしているのでしょう?。

 それも答えは簡単。大した目的は無いのです。

 詰まる所、彼女はお気楽でお節介で、お人好しな危険知らずの、ちょっとおバカさんな子なのでした。

 そして、限りなく白に近い薄紫色の腰まで伸びた髪が特徴的なエレナという子の正体は、私なのでした。

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