奇妙な愛

第1話

「私、あなたと出会って孤独から解放されたの」

「そうか」

「愛って意地悪だと思ったわ」

「なぜ」

「愛は人を孤独から解放するのに、孤独に耐える力も与えるのだから」

「ふむ」

「あなたに会えない時も、あなたを想えば離れている時の寂しさも耐えられる。これって妙じゃない？」

「ふむ」

「愛する人がいるようになって、孤独から解放されて。同時にその幸福感が孤独に対する耐性をも与えるなんて」

「つまり、愛は自ら愛を遠ざけてこそ、その価値はいよいよ当事者を魅了するというわけか」

「そうなの。愛がなかった時は孤独感で押し潰されて。孤独感なんてものじゃなかったわ。痛みだった」

「けれど、愛を知って痛みから解放された」

「そう。愛は手にいれたとたん、孤独を懐かしいものにしてしまう。でも、愛を失えば孤独が痛みへと変わる。痛みを癒すために、また出会いを求める。だとしたら、やっぱり痛みも有益なんだわ」

「ふむ」

「痛みが人を出会いへといざなう原動力になるのよ。孤独で痛みを感じないなら、その人は孤独の籠から出られない」

「きみは僕を失っても有益なの」

「あなたを失った痛みは、あなたを取り戻すことで回復するわ。出会いには再会も含まれるのよ」

終わり