桃太郎の地の文です。桃太郎の童謡が想像以上にヤバかった件

シャル青井

桃太郎さん 桃次郎さん 桃三郎さん

 むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

 おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 どんぶらこ、どんぶらこ、おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃がなんと3個も流れてくるではないですか。

 いや待て、3つは多いだろ。

 そんなに桃太郎いらないだろ、最近のみんなが主役の学芸会か?

「おやまあ、大きな桃だこと。持って帰っておじいさんと食べましょう」

 そんなことも気にせず、おばあさんは桃を持って帰りました。

 え、3つも、どうやって?


 そんなこんなでおばあさんは家に帰り、おじいさんと食べようと1つ目の桃に包丁を入れました。

 すると中から元気な赤ん坊が!

 おっと、他の桃も一気に割れて、それぞれから別の赤ん坊が出てきました。

 出てくるのか……。

 赤ん坊たちはそれぞれ桃太郎、桃次郎、桃三郎と名付けられ、すくすくと成長しました。

 そして桃太郎は村一番の力自慢に、桃次郎はまさかり担いで熊と相撲を取り、桃三郎は砂浜で亀を助けました。

 え、次郎と三郎も太郎じゃないかこれ? どこかで聞いたことあるんだけど。

 どこの携帯電話のCMだよ。

 そうして桃太郎たちは日本一の旗を掲げ、おばあさんから貰ったきびだんごを持って、鬼退治へと旅立ちます。

 3人とも行くのね。

「桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな」

 いやまて、お前どう見ても犬じゃなくて熊だろ。

 熊なら桃太郎じゃなく桃次郎に話しかけろよ。

「あげましょう、あげましょう。これから鬼の征伐についてくるならあげましょう」

 まあ、犬より熊のほうが強いよね。それでいいのならいいんじゃない。

「桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな」

 今度は亀かよ。

 お前、桃三郎に助けてもらったくせに、桃太郎にきびだんごを要求するのな。

 というか、亀って戦力的にはどうなんだろう。硬いとは思うが。

「あげましょう、あげましょう。これから鬼の征伐についてくるならあげましょう」

 どうでもいいけど征伐ってなかなか言葉のチョイスがイカスよね、この童謡。

 で、熊、亀と来て、次の雉はどうなるんだ?

「桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな」

 乙姫かよ!

 亀と出典被ってるじゃん。

 これまで出てなかったじゃん!

 しかもお前もきびだんご欲しがるのかよ。

「あげましょう、あげましょう。これから鬼の征伐についてくるならあげましょう」

 あげるのかよ!

 つれてくのかよ!

 というか、家来だぞ。それでいいのかいいのか乙姫よ。

 ああ、もういいや。どうにでもなれ。


 お、亀が鬼ヶ島まで案内してくれるのか。役に立つな、亀。

 というか、デカイな、亀。

 まあでも、実際の桃太郎だとどうやって鬼ヶ島に行くのか微妙に謎だからな。

 絵本とかだとなんか絶対海渡れないだろっていう感じの小舟に乗っていたらまだマシな方で、キジを仲間にしたらもう次のページでは鬼ヶ島に攻め込んでいたりするのもよくあるし。

 ん、前にもこの話どこかでしたな。

 まあ、桃太郎くらいになると無限に二次創作があるからな。

 そういうこともある。桃太郎が社長になって日本の物件を買い漁るし、鬼ヶ島だって空を飛ぶ。

 で、その鬼ヶ島。


「そりゃ進め、そりゃ進め。一度に攻めて攻めやぶり、つぶしてしまえ鬼ヶ島」

 これ件の桃太郎の童謡の後半なんだけど、物騒だな、おい。

 ああ、ハイハイ、まさかり担いだりお馬の稽古はいいから。

 というか強いな桃次郎。

 さすが後に平安の妖魔バスターズに名を連ねるだけのことはあるわ。

 はい、つつがなく鬼退治は終了と。

「おもしろい。おもしろい。残らず鬼を攻めふせて、ぶんどりものをエンヤラヤ」

 で、これが童謡のさらに後と。

 もう完全に力に酔ってるじゃん。

 敵を倒して面白いとかいうの絶対ヤバいキャラだからな?

 で、鬼を制圧し、財宝をぶんどって帰る流れなわけだ。

 これでその後平和に暮らしましたって無理があるだろ。

 

やっぱり桃太郎はヤバい。心の底からそう思う地の文であった。

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桃太郎の地の文です。桃太郎の童謡が想像以上にヤバかった件 シャル青井 @aotetsu

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