特別読み切りショートショート(BookWalker限定)
9話『デーモンクエスト』part.1
これは
レン=E・マクスウェルという少年が英勇を目指すよりも前。
竜姫キリシェが三百年の封印から目覚めておらず、大天使フィアもまだ天界で身体を癒やしていた時のこと……
冥界ヴェナ・アスラ・ドール――
悪魔と魔獣が跋扈する広大な地下世界で、ある出来事が起きていた。
先代魔王の復活。
「は、はは……ははは! どうだ、私はついに戻ってきたぞ!」
あふれる黒の障気。
魔王宮の地下に隠された小部屋で、
「妾の法力が強すぎるせいで転生に三百年もかかってしまったが、まあいい。転生に成功しさえすればこっちのものだ!」
世界に突如として降臨した『光り輝く者』の襲撃によって、天使と竜と悪魔の三種族は全滅の危機に陥った。これに対し、魔王であったエリゼリスは、人間の英勇エルラインと共に『光り輝く者』に立ち向かったのだ。
しかし戦いには勝利したもののエリゼリスの負傷は激しく、魔王の秘儀である転生に縋るほか消滅を逃れる術はなかったというわけだ。
「ああ、やはり自分の身体があるのは良いな」
薄暗い部屋で――
一糸まとわぬ褐色の裸身をさらす少女。壁に埋めこまれた姿見鏡の前で、生まれ変わった自分を見てほっと胸をなでおろす。
鏡に映るのは見覚えのある姿。
生前の容姿も限りなく再現するよう転生術式を構築したのだが、それも上手くいったらしい。
「ふふ。自分の姿を見るのも懐かしいではないか……って? ちょっと待て?」
転生した大悪魔がきょとんと目を瞬かせた。
「妾の身体ってこんな幼かったか?」
記憶にある自分の姿はたしか……
目鼻立ちの整った美しき相貌に、腰まで届く艶やかな長髪。
体つきも、両手で隠しきれない豊満な胸の双丘に、引き締まったくびれと臍まわり。そこから曲線を描く妖艶な腰つきが自慢だったはずなのに。
それが今はどうだろう。
顔立ちは丸くて愛嬌があり、鼻筋は小さく低く、かわりに目が子猫のように大きい。褐色の身体は華奢で胸は真っ平ら。色っぽさの欠片さえ感じられない。
「これはまさか……」
鏡に映るのは、人間でいうと十歳にも満たない幼女である。
それが自分であると理解して―
「ええええぇぇぇ!? アタシ、もう一度子供からやり直しってこと!?」
魔王宮に、何とも可愛らしい幼女の悲鳴がこだました。
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