第六章 2

「納骨堂を造って、一霊一万円で供養しよう」

と準備にかかった。

始めてみると、通信費、埋葬証明書(焼き場から発行されるもので、たいていは焼骨と共に桐箱に入っている)のファイル。

申込書(印鑑を押したもの)のファイル等々の事務処理。

さらには、役場からの実体調査、それまでは、一度もなかったのに、誰かのチクリであると、役所も暗に認めていた。

それらの書類作成、と人手がとられて、とても一万円では、無理になり、

「一万五千円納骨」

となった。

宣伝は、一切しなかった。

ホームページを改良しただけである。

寺院のホームページは、以前からあった。

ホームページで思い出した。

「派遣僧侶」で検索をすると、マンション坊主が、ウジャウジャでてくる。

これと一緒にされてはたまらない。

「N」は、これの親方をやっていて、私どもの寺を狙ってきたのである。

「一万五千円納骨」は、私の知らない人達が、色々なところで、良い、悪いを書いてくれた。

おおねむ、悪いものはなかった。

ゲンダイのクチコミなのであろう。


やがて、七十六才になったとき、約六十年間、一緒に歩んできた“お母さん”カホルが、突然、風呂場で倒れて、帰らぬ人となってしまった。

それからは、養女の覚演が、第二世住職となって、寺を切盛りしている。

そして、私は八十才となり、この原稿が書けるまで回復した。


さあ、次は、何を書こうかな? ...


― 完 ―

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