vol.5 幕間:家族と弟
海辺の港街対戦を経て小鳥たちと和解した東京軍。平和な時を過ごしていたが、今度は北の地域で
融合生成も戦闘能力も未熟な件の
簡単にかたがつくだろうと高をくくり、八部隊全て動員せず少数精鋭で向かった結果、朝季が心臓を負傷する。司令からその話を聞き暗然としている凪達だったがそこに小鳥が表れ、朝季は無事だと説明する。曰く、朝季には元々心臓が二つあり、もう一つは無事だから問題ないと。
小鳥の言葉通り、蘇生した朝季。だがそれ以降、朝季に微妙な変化が起こる。寝ている間に物の位置が変わっている、記憶を無くすことが多いなど。
それを聞いた周囲の者が朝季を見張るが、その時はこれと言った変化は見られない。隠しカメラで映像を確認するが、朝季自身もよくわからなかった。
しばらくしたある日、凪が朝季の身体にいるのが朝季ではないことを指摘する。
誤魔化しが効かなくなった朝季の中の人物は、自分が白河夕季の本当の弟、白河
科学では説明出来ないと匙を投げる茉理と、理玖の存在が本物ならば蘇生術への糸口が見つかると目を輝かせる小鳥。朝季と理玖の違いをただ一人見分けれる凪は、突然入れ替わる彼らへの対応に困惑していた。
理玖との対話を重ねていく中で凪は、彼が実兄である白河夕季を恨んでいることを知る。家族仲は良くなく、兄弟はお互い嫌い合っていたと。戦闘中に邪魔をして朝季の足を引っ張る理玖だが、凪に咎められ思いをぶちまける。
自分の知る兄は思いやりのない冷たい人間だった。なのに兄を知る人はみんな彼を慕っている。朝季に至っては義弟として大切にされていた。実弟である自分は大切にしてもらえなかった、大嫌いだと。その言葉を聞いた凪は首を傾げ、理玖に問う。
「理玖くんは夕季さんを、大切にしていたか?」と。
大切にできるわけない、向こうが大切にしてくれなかったから。自分は弟だ、守られる存在なのにそうしてくれなかった。なぜそんな兄を大切にしなければならないのか、なぜ自分から歩み寄らなければならないのか、自分は悪くない。
理玖の言葉に、凪だけでなく他の者達も唖然とし、理玖が間違っていることを指摘する。仲良くなりたいなら、歩み寄りたいなら、自分から動かなければならない、と。嫌悪の感情を持って接すれば相手に伝わる、仲良くなれるはずがない。まずは自分が気持ちを変えないといけない。
立場が弱いことは不幸だったがそれでも、まずは自分から歩みよればよかったのではないか。嘆くのは失敗してからでいい、なぜ一度も相手に歩み寄ろうとしなかったのか。そもそも本当に、夕季は理玖が嫌いだったのか? 嫌悪の感情を持って接したせいで、相手もそうだと思い込んでいただけではないか。
会話をしていた時、普段の夕季の顔を思い出せるかという質問に答えることが出来なかった理玖は、自分の考えを改める。
その後、自分はもう死んだ人間だし生きてどうこうは面倒くさいと、身体の主導権を朝季に譲ることを凪に伝え眠りにつく。
朝季には言えなかったが、理玖が現れたことで凪はあることに気が付き始めていた。
九年前、東京奇襲直前に海辺の港街で出会ったお兄さんは白河夕季では、と。
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