第8話 秀太郎うどんを食べる

 今日の晩御飯はうどんと天ぷらだ。うどんはざるうどんで、めんつゆにつけて、つるつるっと食べる。

 

 秀太郎はうどんが大好物だ。そして、その食べる速度がすごい。すごすぎて、家族はひやひやする。つるつるなんてものではない。ずごっずごっと、息つく間もなく、掃除機でごみをすうように、うどんを吸い込んでいく。


 ずごっ、ずごっ……。


 そして悲劇は起こる。吸い込む速度があまりに上がったため、掃除機があやまって大きな袋などをつまらせるみたいに、秀太郎がむせる。


 来る。


 次の瞬間、秀太郎の口と鼻から、うどんがリバースする。


 ぶはぁっ。


 そして秀太郎はむせる。


 ごほごほっ、げふっ、ぶわっ。


 「汚ねえなあ」


 健があきれてうんざりした様子でつぶやく。


「おじいちゃん、だから、もっとゆっくりかんで食べなよ」


 泉が言うと、秀太郎いわく


「うどんは食べるもんじゃねえ。飲むもんじゃ」


 どこまでも、攻めの姿勢を崩さない秀太郎。反省のかけらすらない。


 健も里子も泉も保も、もう慣れてしまって、怒る気にすらならない。


 こうして、晩御飯が麺類の日は秀太郎のリバースは続く。


 


 

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