第3話

 その次の再会は、高校だった。

 中学三年生の時、奨励会に入った。紹介された師匠は弟子のことにあまり興味がなく、「可能性は二割ちょっとかな」とだけ言った。

 プロになれる気満々だったので、単純にびっくりした。しかし実際に、多くの人が奨励会を去っていく。

 東京まで通うのはきついけれど、最初のうちはとても楽しかった。いろんな人と将棋を指す機会があるというのは単純にうれしかった。

 でも、そんな時間は長く続かない。全国各地から、強い子供たちが集まってきている。僕より強い小学生が何人もいる。くじけそうになった。

 両親は将棋のことには興味がなかったが、高校には行かなければならないとしつこく言ってきた。だから、入学した。何の目的もなく、ただ卒業するためだけに高校に来た。

 そこに、朱里もいたのだ。

「びっくりしたね」

「本当に」

 朱里は、進路のエスカレーターを降りたのだ。まあなんとなく、全く理由が推測できないわけでもなかった。

「将棋はどう?」

「まあまあかな」

「いいペース?」

「よくはないよ」

「でも、可能性はあるんでしょ」

「二割ちょっとね」

「ふうん」

 朱里は前よりも少し明るくなっていた。きっと、エスカレーターは酔いやすかったのだろう。

「三東君と私が付き合う確率は何割?」

「え」

「何割?」

「五割……一分ぐらいかな」

「可能性大だね!」

 実際には、九割九分だと思ったし、その日から付き合い始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る