24

「じゃあ行こうか。」


困った風でも、ましてや嬉しそうでもない淡々とした表情の紅林さんは、私に告げるとさっさと歩き出した。

私は慌てて半歩後ろをついていくけど、歩幅の狭い私は時々ちょっと小走りになったりして、紅林さんを見失わないようにと必死だ。

繁華街で人通りも多く、信号が変わると同時に前からも後ろからもどっと人の波が押し寄せる。


急に紅林さんが振り返り、ついて歩くことに集中していた私はびっくりして何もないところで躓いた。

瞬間、「大丈夫?」と腕を支えられる。


「ごめん、歩くの早かったな。」


「大丈夫です。ありがとうございます。」


紅林さんが今までになく近くて、ふわっといい香りが鼻をくすぐる。

何か香水でも付けているのかな?

しかも気遣ってくれたことに更に心臓が跳ね上がる。


優しい。

やっぱり好きだなぁ。


私の胸はドキドキドキドキと、音が聞こえてしまうのではないかと思うほど激しく打っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る