11

それにしても。


35歳独身。

エリート作業長。


思わぬ情報が手に入った。

独身だったんだぁ。

でも、彼女はいるのかな?

って、私ったら何を考えてるの。

いくらなんでも紅林さんを意識しすぎでしょう。


そんなタイミングで真知さんが突拍子もないことを聞いてくる。


「可憐ちゃんはさ、今彼氏いるの?」


「えっ?」


ビックリしすぎて声が上ずった。


「いないです。でも好きな人はいます。」


言って、あれ?好きな人?と疑問に思うも、何だか気恥ずかしくて頬に熱が集まるのがわかる。

そんな私に、真知さんはグイグイ聞いてくる。


「会社の人?」


「えっとぉ、…まだ秘密です。」


どう答えようか迷ったあげく、適当にごまかした。

真知さんはどうなんだろう?

ここによく来る同期の宗田さんとか…?

聞きたい気持ちもあるけど、先輩に対してあまり突っ込んだことを聞くのが躊躇われて、私は口ごもる。


好きな人か…。

私は、紅林さんが好きなのかなぁ。

あの優しい声とかほんの少し笑った顔とか。

胸がキューンとしちゃうんだよねぇ。


そんなことを考えて、はっと我に返る。

そんな、胸がキューンだなんて、紅林さんのこと好きって言ってるみたいじゃん。


いやいやいや、まさか、ね。

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