第31話一八二六年、造船所増設拡充とフリゲート艦建造
「新しい造船所の建設は順調に行っているか」
「はい、とても順調に進んでおります。
この調子で進めば、殿が切望されておられる、フリゲート艦や戦列艦の年内建造も可能でございます」
「そうか、それは重畳である。
だが戦列艦は後でよい。
まずはフリゲート艦の量産を行え」
「は、承りました」
俺は川崎に造船所と鉄工所を建設することにした。
史実通りに、横須賀に造る事も考えたのだが、今は川崎の方がいいと判断した。
将来は総鋼鉄製の戦艦群を建造することになるのは分かっているが、今はまだ木造船しか造れない。
良質な材木を大量に手に入れようと思えば、内陸河川水路を利用しなければ、戦列艦やフリゲート艦の量産はできない。
今から直ぐに、蝦夷樺太に大型造船所を造ることができればいいのだが、残念ながらそれだけの労働力がないのだ。
いや、ないわけではないのだ。
アイヌを玄米で雇えば、可成りの労働力を確保することができるだろう。
だがそんな事をしてしまったら、北前航路や東南アジア航路で売る商品が確保できなくなってしまう。
アイヌから買い取る俵物の対価を倍額にした事で、アイヌが集めてくる俵物の量が四倍になった。
だが、それでも、以前の四倍の量を輸出するようになったのに、俵物が不足しているのだ。
清国や東南アジアで売れる量や価格を考えれば、アイヌに支払う料金を更に五割り増し、以前の三倍にしても十分利益がある。
いや、ぼろ儲けできる。
仕入れ価格を三倍にすれば、蝦夷樺太のアイヌだけではなく、千島アイヌや沿海の民まで俵物を売りに来るだろう。
いや、アムールやハバロフスクの民も俵物を売りに来てくれるだろう。
俺の作戦では、アイグン条約と北京条約で清国がロシア帝国に奪われた領地を、どさくさに紛れて手に入れるつもりなのだ。
当然だが、千島列島もむざむざとロシア帝国に渡す心算はない。
その為にも、千島アイヌ、沿海、アムール、ハバロフスクの民とは友好関係を結んでおきたいのだ。
だから、蝦夷樺太の造船所は後回しにした。
それに、五十五万両も使って喰わしている野非人五十五万人を活用しなければ、俺は愚か者と言われ、折角創り上げた東照神君の巫覡という名声が地に落ちてしまう。
だから、川崎に造船所と鉄工所を造ったのだ。
造船所では、三十二ポンド砲を三十六門搭載した排水量千トン前後の五等フリゲートの建造に挑戦するつもりだ。
それに、野非人を活用した事と、徳川家斉が質素倹約に生活態度を変えたことで、物価が下落して建造費が著しく安くなった。
「快速丸」
建造費:五百両
「迅速丸」
建造費:千両
「三十六門フリゲート艦」
排水量:三五〇トン
全長 :三八・二メートル
全幅 :九・四メートル
吃水 :四・二・メートル
三本マストフリゲート
三二ポンドカロネード砲:三十二門
六ポンド艦首砲 :四門
建造費:三千五百両
「五十二門フリゲート艦」
重量 :一五七六トン
排水量:二二〇〇トン
全長 :六二・一メートル
全幅 :一三・三メートル
吃水 :四・四・メートル
三本マストフリゲート
二四ポンド長砲 :三十門
三二ポンドカロネード砲:二十門
二四ポンド艦首砲 :二門
建造費:二万両
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