第30話一八二五年、想定外の出費と収支

 多くの食糧をどこかで買うのは怖い。

 買った場所で食糧不足が起こしてしまうのが怖いのだ。

 だが、買わない訳にはいかなくなってしまった。

 無宿人狩りで集めた野非人の食糧を確保する必要が出てきたのだ。


 彼らを喰わせるだけで、五十五万石の玄米か、それに代わる食糧を確保しなければいかない。

 今迄は、野非人に以前と同じ仕事をさせて、自分で食糧を確保させていた。

 だがその仕事が、夜鷹や舟饅頭、ばくち打ちや年齢制限違反の振り売りなど、幕府が禁止している仕事をしている者ばかりだった。


 それに、厳密に言えば、彼らを江戸に住ませるのは、幕府の法令を無視している事になり、法令通りにするのなら、郷里に帰さなければいけない。

 だから仕方なく、松前藩が請け人となって造船所の建築や河川の浚渫、浚渫した土砂を使った品川砲台用地の埋め立てなど、仕事を与えて食糧を支給することにした。

 それだけで五十五万両の出費だった。


 ドライゼ銃も二千丁しか完成する事ができず、一万八千両を返金させることになってしまったが、その分次年度以降に買い取る単価を一丁八両と高くした。

 ライフリングと後装填式にするのが難しく、その為の職人を増員するとともに、部品の外注システムを取り入れた。


 俺に銃を売りたい他領の鉄砲鍛冶や三百諸侯と話し合い、士筒級の銃身や銃床などの部品を生産依頼したのだ。

 出来の悪い部品は返品し、全国の鉄砲鍛冶に規格という考えを知らしめた。

 同時に以前買っていた士筒級の火縄銃を、ライフリングした後装填式火縄銃に改造して、実戦力を高めた。


 今年も若党を三千人採用し、玉薬を装填しない模擬射撃訓練に合格した若党だけ、実弾を装填して射撃する訓練をさせた。

 その時には山野に行かせて、鹿、熊、猪、羚羊、豺狼などを実弾射撃の的にして、獣肉と毛皮を確保させた。


「一八二四年の松前松平家収支」


備蓄金 :△四百八万二千七百六十両


北前船 :△二十二万二千両(七十四隻分)

北前船 :△百万両(百隻は船団を組み清国や東南アジア)

北前船 :△七万九千二百両(自家以外の百九十八隻運上金)

快速丸 :△二十万両(十隻)

迅速丸 :△四十万両(十隻)

商場運上:△六万両

試合興行:△十八万両

ドライゼ銃:△一万八千両(三千丁未完成返金)

小計  :△二百十五万九千二百両


藩士扶持:▲四万八千二百四十両(九千兵)

野非人 :▲五十五万両

鉄砲部品:▲八千両(五千丁)

小銃生産:▲四万両(ドライゼ銃五千丁)

(鉄砲部品:五千丁分一万両)

玉薬代 :▲三万両

鍛冶職 :▲二万両(日本刀、槍、鏃)

練炭  :▲五千両

豆炭  :▲五千両

七輪  :▲一万両

陶磁器 :▲二万両

反射高炉:▲八千両(松前藩釧路二炉一基を二基)

反射高炉:▲八千両(松前藩網走二炉一基を二基)

反射高炉:▲八千両(松前藩石狩二炉一基を二基)

反射高炉:▲八千両(松前藩小樽二炉一基を二基)

快速丸 :▲一万両(五十トン五隻×二千両)

迅速丸 :▲二万両(百トン五隻×四千両)

艦艇修理:▲一万両(百隻)

西洋帆化:▲五万両(百隻)

小計  :▲八十五万八千二百四十両


総計  :△五百三十八万三千七百二十両


「現有戦力」

反射高炉:高須藩・独立四炉を四基

反射高炉:江戸韮山二炉一基を二基

反射高炉:松前藩函館二炉一基を二基

反射高炉:松前藩福山館二炉一基を二基

反射高炉:松前藩函館二炉一基を二基

反射高炉:松前藩福山館二炉一基を二基

反射高炉:松前藩函館二炉一基を二基

反射高炉:松前藩福山館二炉一基を二基

快速丸 :五十トン=十五隻

迅速丸 :百トン=十五隻

合の子船:百七十四隻

火縄銃 :一万三千丁

後装火縄銃:二千丁

ドライゼ銃:三千丁

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