創造と破壊のダブルタッグ ~作って壊して世界最強~
逆膝枕
第1話 討伐大会と初めまして
「先生!何で私にはランクがないんですか?もう既に測定は終わっているでしょう?」
「....いいえ、サリンドさん。あなたはまだ試験が残ってますからねぇ。ほら、1つ試験を休んでいたでしょう?」
何時も何時も、入学時からはぐらかされてきた。
私の記憶は確かなのに、何故自分のランク測定は終わっていないと言われ続けているのか全くわからない。
教師陣は私が何時も聞くたびに不思議そうに、さも当然のように常套句として同じ台詞を私に聞かせる。
「....何でだ?私には確りと能力だって発現しているじゃないか」
そう呟いた私は、片手に槍を作り出した。作り出した槍はとても頑丈で普通に使用できるし、通常の槍よりも硬く長い間使える優れもの....だとこの前判明した。
これだけ出来れば最低でもCランクは越えられる筈。
BPL ....バトルポイントランクは戦うこと、教師に与えられた課題をこなすことで上がっていく、この学園のクラス分けに使われる1種の定義だ。
能力というのは神様から与えられた個人の能力といわれている魔法。魔力を消費して行使する奇跡に近い何か。まだ解明は完全ではないので謎の多い力、らしい。
私の所属するクラスは何故か特別講義室を使用しているクラスで、生徒は他と違って数名。
他のクラスならば同じ程度の能力を持つ人間がまとめられている筈だが、このクラスでは見んな度合いがバラバラときた。
教師らは何を隠している?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日は学園総合の実技イベント、討伐大会の日だった。
学園の用意する
そんな日の朝にHRで我らが除け者クラスの担任は私たちに転校生が来たと告げる。
「新しくこのクラスに配属する、マレア・シーリスさんよ~。シーリスさんは特にわからないことも多いでしょうから、皆さん優しく教えてあげてくださいねぇ。........ほらシーリスさん。彼処の席の後ろの席があなたの席よ」
ぼさっとした長い赤髪に、前髪に隠れた、髪が揺れる度に僅かに覗く紫の瞳。このクラスに配属させられたといっても、最低年齢は15の筈だが年齢にそぐわないくらいに背丈は低く、男としても低めな身長を持つ私でさえ見下ろせるぐらいの少女は先生の指示で私の隣の席へとあてがわれた。
「....私はカリヴェル・サリンド、よろしく」
「................マレア・シーリス。」
お互い自分の名前を告げるだけで自己紹介の幕は閉じた。
それからHRの続きが行われていたとき、突然にして学園全体に大きなアラートが鳴り響いた。
『緊急戦闘指令!学園内に大量の
分かりやすいテンプレの警報。
これが討伐大会の合図だ。
ただ、このクラスはまだ参加しないらしく、我らが担任は"さぁて、私たちはどうしましょうかねぇ"なんてのんびりと述べている。
え、行かないの?どうしましょうかねぇじゃなくて参加しないの?
この大会で得たポイントが高ければランクの向上も見込めるし、そのクラスを担当している教師よ評価も上がる筈。
なら私たちを出させてくれよと切実に思うが、我らが担任ことアリス・サルベートは口を開いてこう告げた。
「皆さんは強いのでぇ、今出たら大会が面白くなくなっちゃいますよぅ....少しくらい待ちましょう?」
「いやいやいや、先生遂に不思議の国に呑まれたんですか?言ってること滅茶苦茶ですよ」
こののんびりした教師の能力は
"不思議の
かの有名な物語に出てくる幻想を操る...らしい。見たことはないからなんとも言えないが、強いとは聞いたことがある。
本人曰く、のんびりしているのは自分自身の魔法に呑まれてしまわないように精神を保っていると他のことへ集中力を向けられないからだそうだ。
「サルベート先生が強いのは知っていますけど、私たちは所詮、ランク付すらされていない奴らの集まりです。何故そんなことが言えるんですか」
「ん~それは言えないなぁ...でも、君たちみぃんな、自分の力には自信があるでしょう?それぞればらつきはあるけど強いのも知ってるのよ」
返答になってない!
だが憤慨したところで答えは得られないだろう。こちらを見据える先生の目からはこれ以上詮索するなと言わんばかりの殺気の圧力を感じ、私は口を閉じた。
それから数十分。
外でけたたましい音や奇声、叫び声が聞こえているというのに私たちはいまだに部屋の中。
そろそろ戦わないと流石に不味くない?
「....あ、もうこんな時間じゃないですかぁ。じゃあ、今から白うさぎさんたちを捕まえにいきましょうか~」
大会開始から30分。
やっと私たちは教室の外へと踏み出した。
....因みにビーストは闇のように真っ黒なのだから白うさぎという喩えはどうかと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黒く禍々しい獣達と必死になって戦い続ける生徒達。
その中には結構な負傷者も紛れて地面に倒れていたりと悲惨な状況。
大会参加はこれが初めてだが何と言うか....
「死屍累々、地獄絵図、....素直に気持ち悪い」
隣で小さく呟いたシーリスさんの言葉に同感するしかない。
と言うか君、話せたのか。
「....なぁ、シーリスさん。」
流石にこの中に一人で突っ込むなんて無謀な真似はしたくない、と私はシーリスさんに声を掛けた。
「この質問は些か失礼に当たるかもしれないのだけれど、君の能力が知りたい。この状況下で君はどれだけ戦闘出来る?」
シーリスさんは短く考え、口を開いて一言。
「........拳で倒せる」
おっとぉ?
まさか自分より小柄な少女からこんな脳筋じみた発言が出るとは思ってもみなかった。
だがその直後、シーリスさんの背後を黒い影が覆い尽くす。
咄嗟のことで反応できなかった私は声をあげようとした。
「シーリスさんっ、後、」
うしろ。
と、言う前に黒い影....
何、何が起きた?
「拳で十分、そういうこと。」
私が思っていたよりも格段に、この少女は強かったみたいだ。これは予想外。
「....っ、強いなぁ。............うん、決めた。シーリスさん、私と組まないかい?この大会限りでも良いから一緒に戦ってほしい」
この少女の力があれば私の力も奮い放題、そしてシーリスさんの援護だって出来るだろう。
私は比較的安全で強い戦闘を好んでいるから、どうしても彼女と組みたい。
「....メリット、」
メリットを提示しろと促すシーリスさん。
意外と君、肝が据わってるね!
うん、褒めてないよ!
「メリットか、....そうだね、私は色々なものを作れるんだ。作って造って創る。それが能力。シーリスさんが望む防具でもなんでも作って渡そう、....あまり女の子が血みどろになる姿は見たくないし」
そう、こんな子供みたいな女の子が敵だろうが味方だろうが何かしらの血で汚れるのはあまり見たくないのが本心。
さぁどうするシーリスさん。
「............分かった」
すっと手を差し出すシーリスさん。
?
そのしっかりとした意味を理解できなかった私は魔力を集中させ、彼女の手にグローブを作り出す。
「........そうじゃない、けどいい」
何か違ったらしい。なんかすまん。
「こう、」
シーリスさんは私の手を掴み、握手の形にした。
あぁそういうことか。
「「今からよろしく、」」
「シーリスさん」
「....カリヴェル。私はマレア、マレアでいい。シーリスさんは、嫌」
「そうなのか、....じゃあ、マレア。よろしく」
二人で顔を合わせ、改めて学園に溢れかえる
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