我に、プチシュークリームを!

大地が揺れた。

震度7くらいだろうか?


震度7に至ると、幾つかの結界が崩壊する。



闇が開き、我は光に包まれた。

場所は、少女の部屋。

我は、少女の事をほとんど何も知らない。

なぜこの少女の無意識内に転移したのか?


調べるべきことが山ほどある。


「お姉ちゃん、怖い顔して、どうしたの?」


ベットで、少女の妹らしき娘がゲームで遊んでいる。


中学生ぐらいだろうか?


怖い顔?

まあ外見は【お姉ちゃん】だが、中見は長い事封印されていた古代神だからな。

古代では慈悲深い神と慕われていた我も、さすがにあんなに長い事封印されると、怖くもなる。


しかし、そんなに表情に出てるのか?

我は、鏡で我の顔を確認した。

平均的な女子高生顔の少女が映っている。


可愛らしい♪



多少怖い顔だとしても、まさか【古代神】だとは気付くまい。

さて問題はこの【お姉ちゃん】キャラ設定だ。

この妹に【お姉ちゃん】は、どういう態度で接していたのか?


そんな事を考えていると、我の意識は少女の無意識に落ちて行った。

      

    

   


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ああ~、プチシュークリームが食べたい。

古代にはあんな可愛く、甘いものなどなかったし・・・




そんな事を考えていると、再び、闇が開き、我は光に包まれた。

何らかの理由で、女子高生の意識と我の意識が交替したのだろう。



目の前には、嫌な感じの男が、

「お前、ふざけんじゃねーぞ!」

と、この古代神に向かってほざいた。


正確には、我が依り代としている少女に対してだろう。


長い事古代神をやっていたが、そんな事を言われた事はなかった。

それはもう怒りを通り越して笑えてくる。


しかし、口の中が切れて痛いし、血の味がする。


状況から、この男に殴られたのだろう。

この少女は、呆れるほど、控えめで優しい少女だ。

それゆえに、付け込まれやすい。


男の手には拳銃。

拳銃で脅されて、男の部屋に連れ込まれたらしい。


本物か?

殺傷兵器特有の気配がする・・・


少女は、恐怖から気を失ったらしい。

結果、我と交代したのか?


しかし、なかなか危機的な状況ではないか!

我の全身に、戦士の血が駆け巡った。


我は

「なんなんですか!」

と嫌な感じの男を挑発した。


嫌な男は拳銃のグリップで、殴りつけてきた。


たまらん!戦いの感触がたまらん!

さらに戦士の血が我の身体を駆け巡った。


この戦場の昂揚感!


さて、拳銃など、古代神の前ではおもちゃに過ぎない。

たかが人間が、古代神を脅すとは!


我は、瞬時に拳銃を奪った。


その瞬発力に依り代の少女の身体が、少しきしんだ。


人間の少女の身体に、古代神の瞬発力は、負担を与えすぎるのだ。

後で、この少女は激しい筋肉痛と疲労感に襲われるだろう。



すまぬ。乙女よ。



何が起こったか解らない表情の男の髪を掴み、


「目には目を、歯には歯を・・・口の傷には、口の傷を・・・だろ?」


と奴の顔を床に叩きつけた。



人類想いな我は、一応、人類の法典に基づき、嫌な感じの男を罰した。


口と言うか、顔中血まみれなのは、誤差と言う事で・・・・



血まみれの男を拘束すると、我は急いで少女の携帯を取り出した。


いつまた少女の意識と交代するか、解らない。

我は急いで、現状を把握した。



携帯を使いこなせる古代神など、我ぐらいの者だ!



背後で、血まみれの男がうめき声を上げた。

我を見上げる男の目は怯えていた。


「心配するな、殺しはしない。こう見えても我は死刑反対論者だ。

お前は生きたまま地獄へ行き、死ぬことも許されず、古代神を侮辱したことを悔いて暮らせ」


ふっ!っと息吹をかけると、男が座っている場所に穴が開き、男はその穴に落ちて行った。

どちらにせよこんな奴を、我の依り代の、この弱っちぃ少女の近くにいさせる訳には行かない。



さて、やるべきことは終わった。



後は・・・我は、この前交替した時に、ネットで探し当てたケーキ屋に急いだ。

プチシュークリームが格別との噂のケーキ屋だ。


我は街を疾走した。中身は古代神とは言え、容姿はいたって普通の女子高生だ。

なんの問題はない。


我は、若干の興奮とともに、ケーキ屋に入った・・・


目当てのプチシュークリームが目の前に!


ん?!えっ!この感覚は、まさか交替か?



マジで・・・



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何で私、ケーキ屋さんに、いるんだろう?


意識を取り戻した少女は、不思議に思った。

口中の傷の痛みと、全身を襲う筋肉痛とひどい疲労感。


「まただ・・・」


教室から出た後の記憶がない。

でも、とても嫌な存在を、誰かが消してくれたような爽快感が心には、残っていた。




「なんかプチシュークリームが食べたくなった」


少女はプチシュークリームを幾つか買うと、1つだけその場で口に運んだ。


その一口に、少女の無意識の底に沈んでいる古代神は、激しく歓喜した。





おしまい

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