せっかくなので、ダイイングメッセージを残そう

密室で腹部を刺され、


最後を察した推理小説家は、


ダイイングメッセージを残そうと決した。


その情熱は推理小説家に瀕死の痛みすら忘れさせた。


自分の読者なら解けなくはない謎を含めた、


ダイイングメッセージ。


その完成に推理小説家は1人歓喜した。


しかし、死が数秒後に迫ったその時、


推理小説家はポケットに携帯電話がある事に気づいた。


これじゃあ・・・被害者は携帯電話があるにも関わらず、


手の込んだダイイングメッセージを残した事になる。


「馬鹿じゃねーか!」


しかし、もう迫りくる死によって、


ダイイングメッセージを修正する時間も、


消す時間も残ってなかった。



そう言えば、自分の小説の登場人物はみんなどこか抜けていた。



「走馬灯の様にってあるんだな」


今まで描いてきた、その愛おしい登場人物たちが、


走馬燈のように蘇ってきた。




おしまい

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