伏見稲荷大社③

 なんとかたどり着いたゴール地点に、友達はいなかった。

 まあ、待っててほしかったなんてわがままは言わない。途中で道が分かれていたし、同じ道を辿ったかも不確かだ。

 それでもどこかで合流しなければと、人混みの中に紛れ込む。その中央、使われていない建物のそばで待つことにする。

 スマホを取りだし、居場所を訪ねる。

 返信がくるまでの間、辺りをうかがいながら待つことにする。それも飽きてくると、お守りを買いに人混みの中に飛び込んだ。この人混みのどこかに

、友達はいるのだろうか。いないのだろうか。返信を取りこぼさないよう、スマホはぎゅっと握りしめる。

 人の頭の間からお守りを覗きこみながら、目的のものを探す。弟への学業のお守り、おじいちゃんへの長寿のお守り。そして、両親への幸福守り。忘れちゃいけない、自分への達成のカギ守。

 順番が巡ってくるのを押しつ押されつしながら待つこと数分。もしかしたら割り込んだかもしれないけど、なんとか先頭にたどり着き、手を伸ばして目的のものを掴む。なるべく時間をかけないようささっと、手の空いた巫女さんに手渡した。

 戻ってきたお守りに心が沸き立つ。居座りそうになって、はっとして、すぐに元の場所へ引き返した。

 返事はなかなか来なくて、ただ時間だけが過ぎていく。そうしてできた隙間時間を、袋の中にしまったままのお守りを覗きこみながら待つ。

 そして、やっと届いたラインに、驚く。


「マジか」


 友達はすでに最寄り駅まで戻ってしまったらしい。

 私は慌てて人混みの中に駆け込んで、誰よりも早く足を動かした。と言っても。人混みの中進むのは一苦労で、気持ちだけが逸るばかり。すぐに行きますと返事しなかったことに心を落ち着かせながら、流されるより早く人混みを抜け出す。

 途端に、道を間違えてないか不安になったが、記憶を掘り起こしながら先を急いだ。

 なのに、駅についても友達の姿が見当たらない。

 なぜ!?

 不安が込み上げる。だけど顔には出さないよう、さらに奥に進んだ。改札を通ったら引き返せない。行き止まりで振り返って、駅を背にする。


「来た!」


 声の方を振り返ると、そこには寒そうに身を縮めた友達がいた。


「先に帰ったのかと思った!」

「帰ろうかと思ったわ!」


 その後は、年越しをまだまだ楽しむために、八坂神社と清水寺に行くことにした。

 さんざん責められながら、言い訳しながら、電車を待つ。

 がら空きの電車に乗り込んで、やっと一息つけた気分だった。


「そういえば、途中で道、分からなくならなかった?」

「ああ、二又に別れてたところ? こっちだって、標識出てたでしょ?」

「嘘っ!?」


 衝撃の事実に、悔しさが込み上げる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る