御朱印GIRLS
巴瀬 比紗乃
御朱印巡り
久しぶりに、遠方の友だちに会った。
「最近何してたー?」
「そっちこそ、彼氏とはどうなった?」
随分前に別れたよ!あ、そうなんだ。じゃあ最近何してんの?そっちこそ、今何してんの?
なんて他愛もない会話は、永遠に続きそうだった。
「そういえば、最近、コレ始めたの」
とりあえず喫茶店に入り一息つくと、友だちは一冊のノートを取り出した。スケジュール帳くらいの大きさだ。
友だちはそれを、まるで通販番組のように私にかざした。
「御朱印帳じゃん」
「なんだ、知ってたんだ!」
それが何かを言い当てたことで、友だちのテンションが高まった。同士を見つけたかのように、イイよねー御朱印帳ー!と浮かれている。
しかし私は、そのテンションについていけずにいた。本当にいるんだ、御朱印集めする女子。と、最近耳にするようになった御朱印ガールの実体を目に、ただただ尻込みしていた。
数年前。知り合いのおばさんの付き添いで、神社仏閣を巡り始めた。そんな中で、御朱印と御朱印帳の存在を知った。それにどんな意味があるのかは知らなかったが、興味が湧き、初めてみたいな、なんてうわごとのように言ってはいた。
今では御朱印ガールなんて言葉も聞くようになり、より身近になったが、私はどこか一歩踏み出せずにいた。
だから、尻込みした。だから、羨ましかった。
私はまだ始めてないんだと、わざと始めずにいる体を装う。すると友だちは、
「早く始めなよー」
なんて、容易く誘われた。
私はなぜ、今まで御朱印帳を手にしなかったのだろう。
お金の問題? 柄にこだわってるから? それとも、御朱印を集めるような友だちがいなかったから?
友だちが、御朱印帳をめくって旅の思い出を語りだす。
友だちの楽しげな笑顔が、私を後押しする。
こだわりは捨てたくない。
残るものだし、一生大事にしたいから。
でも、逃げ腰になるのはもうやめよう。
私にだって始められる。一人でだって楽しめるはずだから。
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