第57話  デート当日はやって来るわけで

「はうわぁ!!」


 目が覚めガバッと起きる。寝巻きを着てベットに寝ていたとこをみるに母さんが寝かしてくれたってことか。

 どうも最近急激に眠りが襲ってきて困る。それもこれもトラが厄介ごとを運んできて俺の頭を酷使させるからだ。

 まったく元に戻る方法を探すどころではない。


 俺は起き上がると母さんが用意してくれていた服に着替える。最近気付いたがアンドロイドなんでご飯を食べたり顔洗ったりしなくていいのは行動が早くなるという利点ではある。


 上から

 タンクトップ(白)の上に袖がフリルになっているTシャツ(水色)にフレアスカート(白ベースに黒の水玉)足元はサンダル(ブラウン)

 夏なのでシンプルな装い。髪型は母さん今出掛けているので櫛をといただけで髪はそのまま左にネコさんの髪留めをつけると鏡を見てチェックする。


 ふむふむ、寝起きでも可愛い俺。


 とてとてと歩きリビングに行くと、テレビを見ていたトラが俺に気付き、近付いて俺のオデコに手をやって自分のオデコも手を押さえる。

 熱でも計っているんだろうか?


「マスターおはようございます。体は大丈夫ですか? 昨日も倒れるように眠ったんで心配したんですよ」


 俺はトラの手を握ってオデコから離すとわざとため息をつく。


「アンドリョイドが発熱始めたら終わってましゅ。トリャは準備できたんでしゅ?」


「はい、ボクはもう準備終わっています。後は來実さんが来るのを待つだけですね」


 トラの行動を見て何となく安心感を感じた俺は今日のデートもどうにかなるんじゃないかなんて楽観的に考えることにした。


 玄関のチャイムが遠慮がちに響く。あれって人によって強弱つくものじゃないのに遠慮がちに聞こえるから面白いものである。


 玄関を開けると恥ずかしそうに立つ來実が立っていた。

 その姿はオーバーサイズのTシャツ(黒)でゆるくふんわりしたシャツは膝上まである。横にスリットがはいっておりそこからショートパンツ(ネイビー)が見える。足元はパンプス(黒)

 手にはショートネイル、足のペディキュアは青をベースにグラデーションが施され小さな星や貝殻が施されている。日に当るとキラキラしているからラメかなにか入っているっぽい。


 ふむぅ、あくまでも自分のキャラを崩さずに可愛く来るとはなかなかレベルが高いな。てっきり暴走してフリフリな格好で現れるかと思った。それはそれで見たかったけど。


 ただ今の來実はあんまり冷静そうではないが。


「お、おはよう。いっ、いいお日柄……天気だよな。えっとなその……今日はよろしく……な」


「うん、ボクの方こそよろしく」


「う、うん」


 屈託なのない笑顔で答えるトラにポンッと頭から煙を出して表情を見られまいと下を向いて答える來実。

 こういうのって当事者じゃないと冷静に見られるもんだな。來実のことは隣の家に住んでいて昔から知っているのにこんな表情を見せるんだと知り感動すら覚える。

 ただこの気持ちがトラに向いていると思うとちょっと……いや結構嫉妬心が芽生える。だがここは冷静に、今回はあくまでもトラに好意を抱いている女の子がいて、その好きってのを見せこのまま放置するわけにはいかないんだってことを教える。あわよくば友達関係に戻してしまおうって考えている。


 でもなぁ……この來実を見ていると俺出来るかなぁそんなこと。ちょっぴり弱気になりながらも俺は來実に虚勢を張って告げる。


「來実、今日はわたちもついて行きましゅ。2人っきりには出来ないでしゅが、これはわたちがお前たちを厳選するためのものでしゅ。悪く思わないで欲しいでしゅ」


「い、いや助かる。その2人っきりはその……な?」


「な? ってなんでしゅ。あくまでも2人がメインでしゅからわたちはついていくだけでしゅよ。どこへ行くとかも決めるでしゅ」


 俺はトラの足をペコ♪ っとたたく。


「ほりゃトリャ。お前が來実と話して今日のデートを決めていくでしゅ。少しは予定決めたんでしゅよね?」


「うん、行こう來実さん」


 差し伸べるトラの手を來実が恐る恐る握るとトラがぎゅっと握り歩き始める。恥ずかしそうにしながらも歩く來実の後ろを俺はついていく。

 ちょっぴりの嫉妬と不安、希望を持って。



 * * *



 取り敢えず2人の自主性に任せてみたもののトラはニコニコして來実の手を引き、來実はいつもと違い頬を赤く染めながら目線を下にしてついていく。ひたすらそれだけだ。

 これではデートと呼べない気がする。


「2人とも何処へ行くんでしゅ? もっとデートっぽいコーシュコースじゃなくていいんでしゅ? 楽ちいでしゅ?」


 俺の質問に「うん!」と元気よく答えるトラと激しく首を縦に振る來実。

 あぁ、楽しんでるのね。まあ良いけどこのままではトラに好きが……いやすげぇ分かりやすいくらい見えてんだけどね。


 いつものオラオラ! みたいな勢いはなく頬を薄いピンクに染め下向きながら手を引かれ歩くこの子を見て気付かないならどうしろってんだ?


「くりゅみ! お腹しゅきませんか?」


「え? あ、うん」


 俺は來実にお昼を促してトラに目で訴える。

 通じたのか軽く頷くトラが來実の手を握り歩き始める。



 * * *



 でたどり着いたのはちょっと可愛らしい外見のカフェ『ククーラ』

 窓際にこれまた可愛らしいお人形さんが並んでいるのが見える。


 可愛い場所を選ぶものだ。だが來実にここは似合わないだろ。俺ならそうだなあ……

 サクッと食べれ安いるファーストフードかファミレス。あ~うどん屋かラーメンも良いかな?

 予算面でもここはちょっと敷居高いだろ。


 俺なりのデートプランを考えながら來実をチラッと見るとビックリするくらい目を輝かせてカフェを見つめている。だがすぐに首をフルフルと横に振り始め必死にニヤケる顔を押さえようとしている……のか?


「來実さん行こう」


 トラが手を引くが來実はその場から動こうとしない。


「わ、私……似合わないから。その……可愛いの。そう思う……だろ?」


「そんなことないよ。ボクは來実さんが可愛いの似合ってるって断言できるよ」


 少し遠慮がちに自分にはココは似合わないと言う來実に対してさらりとそんなことを言ってのけるトラ。

 本心から言葉を発するってこういうことなのだろう。言い方に迷いがなく下心もない言葉、その純な言葉に來実は顔を真っ赤にしながらも目は嬉しいと訴えている。


「行こうよ」


 再び引くトラの手に今度は迷いなくついていく來実の表情は少しだけ柔らかい。


 俺、空気に徹して時々口を挟み2人を誘導しようと思ったけどこれでは本当にただの空気でしかない。


 俺上手くやれるのか?



 ────────────────────────────────────────



 次回


『ツンデレのデートはツンもデレでしかないわけで』


 ツンデレってその「ツン」と「デレ」の温度差が魅力なわけですが、「デレ」始めて時々「ツン」に戻らないとただの甘い人になるので時々は「ツン」に戻らないといけないのか。

 それとも過去に「ツン」の実績があれば「ツンデレ」を名乗って良いのか。


 どうでも良いことを考える私に御意見、感想などお聞かせ頂けると嬉しいです。

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