暗喩ちゃんと直喩ちゃん

詩一

第一話 ぶっ殺してやろうと思ってチェーンソーのエンジン掛けたんだけど暗喩ちゃんに止められたの。

 やっほー☆ みんな元気ー? チェーンソーぶん回し系女子の直喩ちゃんだよー! 言葉狩ことばがころだんの新進気鋭のエースだよん!

 今アタシは、うちのBOSSボス!!四字熟語よじじゅくごせんせーのフリをして組織をぶっ壊そうとした四文字熟語よんもじじゅくごって言うブタ野郎を追ってるんだ。


 四文字熟語よんもじじゅくご四字熟語よじじゅくごせんせーとクリソツなんだけど、故事成語こじせいごさんが特殊能力の“矛盾コントラディクション”で、

「いやぁ、四文字の熟語なのに、トータル五文字はおっかしくないかい?」

 って感じで見破ったんだ。


 そしたらそいつ逃げようとしてね。ぶっ殺してやろうと思ってチェーンソーのエンジン掛けたんだけど暗喩あんゆちゃんに止められたの。


「追跡しましょう。彼を追って行けば四字熟語よじじゅくごさんのところに辿り着ける」


 ってさー、凄くない? 暗喩あんゆちゃんのこういうクールなところ好き。暗喩あんゆちゃんだってめちゃムカついてたはずなのにさ。


 そんで逃げるとき、四文字熟語は“横行闊歩ランパント・ウォーク”っていう四字熟語せんせーのパクり技を使って、壁とかぶち抜いたり空気抵抗やらなんやら無視したりして走るもんだから超絶速くてさー。見失っちゃったんだ。でも、故事成語さんの“千里眼クレアボヤンス”で行き先はバッチリわかっちゃったから、今はのんびり竜に乗ってそこに向かってるとこなんだぁ。

 あ、この竜は故事成語さんの“画竜点睛フィニッシング・タッチ”で出した竜に、ギャル文字もじちゃんが「なにこれ白目向ぃてるんですけどヤバぃゥケるw」とか言ってキラキラの瞳を描いた竜だよ。


 暗喩ちゃんがアタシの背中に全体重を掛けて抱き着いてる。多分寝てるんだと思う。こんな状況でも寝られる暗喩ちゃんは可愛い。後ろに手を回して、彼女が落ちないようにする。あ、チェーンソーは竜の手に持たせてあるから大丈夫だよ。仲間をぶっ刺しながら可愛いとか言うサイコパス女子じゃあないから安心してね。


「直喩ちゃん。ぁたしが支ぇとぃてぁげょぅか?」


 ギャル文字ちゃんが気遣ってくれる。ギャルギャルの彼女だけど、こういうこと言われるとアタシよりパイセンなんだってことを思い出すよ。


「大丈夫。暗喩ちゃんが起きちゃうといけないから」

「ぅぅ……。直喩ちゃんの愛がマジャバイょ」


 そう。アタシの暗喩ちゃんへの愛はマジヤバイ。だって暗喩ちゃんはアタシに本当をくれたんだもん。

 それまで見えてた世界が、偽物に満ち溢れたものだって気付いて、こっち側に来れた。

 あれから1年くらいは経ったのかなあ。

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