秘めたる想い、永遠であれ

 吸い込まれそうなほどの青い空。低い位置に浮かぶ雲。その雲が風に連れられて運ばれていく。うるさいくらいの蝉の鳴き声。じりじりと地上を照らす太陽。彼は、そんな夏の風景の良く似合う人だと思う。私は、そんな彼が好きだと思う。

 私は日陰で生きてきた人間だから、彼のように日向にいる人には近づけないと思っていた。近づいてはいけないと。けれど、私は彼に近づいてしまった。徐々に、徐々に。

「君はなにを怖がっているの?」

彼は私に言った。そんなこと、自分にも分からなかった。怖いことなんてたくさんあった。彼に近づけば近づくほど、私は彼に近づいてはいけない人間なんだという気持ちが大きくなっていた。

「私ね、彼のことが好きなの」

そんな時、友人にそう言われた。彼女は日向の人だった。彼と同じ場所にいる人間だった。これはチャンスだと、そう思った。

「協力してくれるよね?」

彼女の無邪気な笑顔の問いに

「もちろん」

と、私は心からの笑顔で答えた。

 私なんかがいなくても、彼と彼女は恋人同士になっていたんだと思う。仲が良さそうに手を繋いで歩く彼らを、私はほっとした気持ちで眺めている。だからといって、彼のことが好きだという気持ちが消えたわけではない。

 いつかこの気持ちは消えるのだろうか。遠くからただ眺めていたいと願う、この気持ちは。もしもこの気持ちが消えるとしても、その日まで想わせておいてほしい。誰にも知られることはないから。決して口にすることはないから。あなたが好きだと。

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