【新たな世代《エピオン》】

プロローグ-A.「暗殺者と皇女さまのお話」



 ……とある王国のお話です。

 大きな大きなお城の中で、王子さまと王女さまが暮らしていました。


 お花とお兄様のことが大好きな、可愛らしい王女さま。

 普段は静かに本を読んでいるけれど、妹には優しい王子さま。


 二人は兄妹でしたが、腹違いの子供でした。

 けれども……そんなことは関係ないくらい、仲の良い兄妹でした。



 ――




  ◇



「お前さえ、居なければ……っ!」



 炎上する馬車の中――王子さまは小さな手で、キリキリと王女さまの首を締め上げていました。


 ……王女さまには、何が起こっているのか理解出来ませんでした。


 ――優しいお兄様が、どうして……?


 王女さまには、目の前の王子さまが、別人にしか見えません。

 けれど……王女さまの首を締めているのは、間違いなく『王子』さまでした。


 お兄様は、怖い悪魔に取り憑かれてしまったの――?


 いいえ、そうではありません。

 ……賢い王子さまには分かっていたのです。

 妹がいる限り、自分は偉い王様にはなれないのだと。


 ――妹を事故に見せかけて殺せば、自分が次の王様になれる……!


 しかし――王子さまはすんでの所で、王女さまを逃がしてしまいました。

 ……王女さまは、近くにあった貧民スラム街へと必死に逃げ込みます。


 一方で王子さまは、『悪い大人達』に妹を追わせることにしました。

 普段は品行方正な王子さまでしたが、実は『悪い大人』と繋がっていたのです。

 褒美を約束すると、『悪い大人達』は喜んで王女さまを捕まえに行きました。

 

 ……そして不幸なことに王女さまは、『とても綺麗な女の子』でした。

 『悪い大人』に捕まった、綺麗な子供たちの運命は悲惨です。


 王女さまのか弱い足で、大人達から逃げ切れる訳もありません。

 やがて――『悪い大人達』に囲まれて、絶対絶命の状況を迎えるのでした。



 しかし、そんな王女さまを助けたのは――偶然出会った、『名も知らない貧民スラム街の少年たち』でした。


 彼らは貧民街の治安を維持する、『少年自警団』。

 その中でも、一人の少年が際立って無双していました。

 最弱の【盾】の異能と、一本のナイフだけで――その少年は『悪い大人達』を、次々に薙ぎ倒していったのです。


 そして、あっという間に『悪い大人達』を撃退した『少年自警団』ですが……彼らは王女さまのお礼も聞かず、何処かに去ってしまいます。


 『貴族とは、絶対に関わるな』――それが、彼ら自警団の決まりだったのです。



 けれども、王女さまは諦めませんでした。

 貧民街の中を拙い足で必死に走って、少年達を追いかけます。


 ――せめて、一言お礼を言わなきゃ……!


 そんな王女さまの熱意に負けた【盾】の少年は、足を止めたのでした。



  ◇



 ……これが暗殺者の少年と、王女さまと、王子さまのお話です。

 この続きは、またの機会に……。




 プロローグ『Tales of Assasin and Prinncess《暗殺者と皇女さまのお話》』

 To be continued ……

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