ハムシンを目指して

Kohr.435円

日本ver.

第1日目 よし!バイトしよう!

狭川さがわ颯偉そういはある日、思った。「よし! バイトしよう!」そう、その言葉に力強く言い放ち、ガッツポーズをとる。


          

          ◇◇◇



朝、8時


「いってきまーす!」


「行ってらっしゃい!」


颯偉はいつもより元気よく朝、学校に出掛けた。


最近、バイトを始めた。颯偉は今高校2年生。

谷武高校2年C組だ。部活には入っていない。入る余裕なんかない。なぜならカムシンを買うために、今からお金をためないといけないからだ。

颯偉は学校の校門前である女性と鉢合わせた。高校から知り合った女子高生だ。杉原すぎはら有咲ありさだ。いつもひまわりのように明るく、元気な女の子。髪型は黒色でボブよりのショートヘアで前髪をななめに流している。部活はアルティメット部。アルティメットとは、バスケットボールとアメリカンフットボールを合わせたようなスポーツで、

コートで、7人ずつ敵、味方に分かれて一枚のディスクをパスしながら運び、エンドゾーンを目指し、得点を稼ぐスポーツだ。なかなか難しい。

颯偉の好みの女の子なのだが、有咲は気分屋で少しサバサバしているので、たまに有咲の言動に颯偉がオドオドすることがある。

颯偉は背は平均より低め166センチ、髪型は黒のあの丸みのあるシルエットが特徴のマッシュショートという髪型をしている。

ほぼツッコミ担当になることが多い。

思っていることが鏡を映すようにすぐ態度が出る性格をしている。


「そういちゃん!! おはよう!!」


「うわっ!! びっくりした! なんだ~、ありさか」


「あれ? なに嫌そうな顔をしているね?」


「おはよう、嫌......ではないけど、そのちゃん付けはやめてくれるかな?」


「なんでぇ? かわいいじゃん」


「可愛くないし、そういう問題じゃない!」


「あ、そう」


「そうそう」


「まあ、それより早く教室行こう! 遅れるよ!」


「だれのせいじゃあ!」


「はははは!」


そういうと、二人は2年C組の教室に向かう。


教室に向かう途中に少し話した。


「そういえば、アルティメットのほうどうなの?」


「アルティメット? とくにふつうだよ」


「いや、それじゃ会話がおわるわ」


「あ、そう? なんていってほしい? もしかして、他人の不幸を、なんて考えてる? それとも......別の話かな?」


「ばっ! バカやろう! 調子はどうだ!? って話だよ!」


「あ~、なんだ、そう。もう少しボケてよ。つまんない」


「ひどいな~、おれボケるの苦手だし」


「あっそう、じゃあツッコんでよ」


「いま、ツッコミいれるところあったか!? あ! あったな! ツッコミいれるところないのにツッコんでよ! はおかしいよなあ!?」


「はははは!! やっぱりそういちゃん面白いね!」


「ふざけるな」


「ははは!!」


「いつまで笑ってんねん!」


「おっと、ついたな、早く席につけよ」


「はいはい」


颯偉と有咲はおのおの、自分の席についた。有咲とは同じクラスだ。1年の時も同じクラスだった。

颯偉はここで嫌な予感がした。まさか、来年も同じクラスじゃないよな? 

勘弁してくれよ?

そうなったらおぞましくて、おちおち寝れねえよ。

そんなことを思ってた。


そして、授業が始まった。


あっという間に授業は終わり、昼休みに入る。


すると、すかさずあの元気なお嬢様が話しかけてきた。


「ねえねえ! そういちゃん!」


「おい、ちゃん付けはやめろ!」


「あはは! 相変わらずだね!?」


話しかけてきたのは、有咲だった。


「なにが相変わらずだね!? だよ! 朝から一緒だったろうが! あたかも夏休みがあけて学校始まって久しぶりに会った時みたいな雰囲気を出すな!」


「それは、そうとおばさんにきいたけど、バイト始めたんだって?」


「あのばばあ! 話やがったな! ああ、そうだよ! はじめたよ!」


「ふう、大丈夫なのぉぉ?! ちゃんとできてるのぉぉ?」


「あと、ババア言うな」


「はらたつな......その言い方! ていうか、疑問に思ったがなんでうちのお母さんをしってんだよ!?」


「まあ、色々あってさ」


「あ、そう。でもお母さんの前で「おばさん」なんていうなよ」


「......い、言える訳ないじゃん」


「ですよね......」


「(あ、ありさでも怖いものがあるんだな。よし、ネタにしよ、今後の脅しに)ふふふふ」


※ この颯偉のいう男はカスである。


颯偉のお母さんは現在43歳。名前は舞優まゆ。すごく美人だ。髪は少し茶髪入り。長めのロングでたまにお団子のような髪型にするときがある。背は低め颯偉と同じ位。

「おばさん」と呼ばれるのがすきではないため息子や息子の友達などに名前で呼ばせている。

結構単純なところがある。職業は診療放射線技師。頭はめちゃくちゃいい。


「ところでさ......今日、家行っていい?」


「は? なんで? あ、いま思ったけどおれお前にお母さん紹介したことないのになんでそんなにお母さんと仲いいの? なんで知ってんの?」


「いや~だって、私のお母さんと知り合いだし。あともうすぐ、テストだし! 教えて貰おうかと。それに私、診療放射線技師に憧れててさ!」


「へ~、そうなんだ。でもごめんな、今日バイトだから」


「え~、今日もなの? お母さんから聴いたけど、バイト始めてもう4カ月だってね。もう週5で働いてるみたいだけど? やりすぎじゃない?」


「そうか? 週5だぜ?」


「でもなんでそんなにお金ほしいの?」


「あれ? 言ってなかったっけ? おれカムシンがほしいんだ」


「は? カメムシ? きも......」


「いやいや! カメムシなんかいらないわ! カムシンだよ! カムシン!」


「カムシンってなんだっけ?」


「カムシンは、マセラティ・カムシンっていう車だよ。その車はな......」


と、説明をする間に長くなると察した有咲は止めにはいる。


「はいはい......はやく食べよ」


その後、昼ごはんたべて、授業が始まり、あっという間に放課後。


颯偉はさっそうとバイトに向かって行った。


笑顔で走って向かう颯偉を、有咲は部活の準備をしながら見ていた。


1年の時はよく一緒に帰ったり、放課後、颯偉は残って部活見ててくれたり、遊んだりしてた。


今年始まって以来一度も一緒に帰ってない。


有咲はそんな颯偉に対して、少し寂しげな顔を見せていた。



ー 1日目 よし!バイトしよう ー 続く



















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