第821話 撮影者

「ねぇ、本当にここでいいの?」


「あってるよー。ここでビデオを撮影すると不思議な事が起きるんだって」


そこはすでに訪れる人の居なくなった神社だった。管理する人が居ないため、すでに社は崩れている


「別に、死んだ人が居るってわけじゃ無いし、憑りつかれたりはしないと思うよー」


「本当に? まあ、まだ明るいし怖くはないけど……」


さすがに、真夜中に女子高生2人で人気の無い場所へ行く勇気は無かったため、人気は無いが明るいうちならと来ていた


それから、1時間ほどかけて色々な場所を撮る。軽く中身を早送りで確認するが、特に何もおかしなところは無かった


「うーん、面白いところが何も無いね。あ、そうだ。帰る前に……」


「ちょっと、何してるの! さすがに、それはヤバいでしょ」


彼女は、自分が持っていたペットボトルに入ったお茶を、崩れた社にぶちまける


「……なーんにも起きないね」


「起きたらやばいんだから、帰るよ」


「はいはい」


2人は、ビデオをカバンに仕舞い、家路につく


ビデオを撮っていた彼女は、今日の内容を編集していた


「何も無いなー。って、あれ? この場面、とったっけ?」


それは、最後にお茶をぶちまけた後だった。視点が切り替わり、2人が帰る後姿が映っている


「うそっ、ビデオはとっくに止めてるはずなのに!」


動画は、彼女が家に入るまでついてくる。そして撮影はずっと続き、彼女が風呂に入る姿やトイレの姿まで映しだす


「やだやだやだ、こんなの絶対にネットにアップできない! ……え?」


その後、撮影は彼女が動画を編集する場面になり、早送りになる


「なんで、なにこれ!」


今まで、数メートル離れた所から撮影されていた動画が、段々と彼女の後ろに接近してくる


彼女は慌てて真後ろを確認するが、当然誰も居ない


さらに彼女は、ディスプレイの隅に、顔のような模様が浮かんでいることに気が付かなかった

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