第820話 髑髏

今時珍しく、路上でアクセサリを売っているのを見かけた


シルバーか鉄かは分からないが、銀色で細工の凝ったアクセサリが並んでいる


普通の店で似たような物を買えば、数万はしそうだったが、ここにあるのは高くても数千円だ


店主はフードを被っていて顔は見えないが、体格的に小柄な女性か未成年の男性に見える。つまり、無断で露天を出しているのだろう


「これ、自分で作ったの?」


店主は、声を出さずにコクリと頷く。今度はじっくりと見るが、何か得体の知れない雰囲気があって目が離せなくなる


十字架や髑髏など、ロックな感じのするデザインが多い


その中で、髑髏をあしらった指輪が気に入った。今にも笑いだしそうな髑髏が大きくついた指輪だ


「これを買いたい」


「それは売り物じゃ無いから、ダメ」


中性的な声だった


「売り物じゃないのに、置いてるの?」


「それ、人除け用」


「どういう事? 客を寄せないって事?」


「こういうのに興味が無い人だけ寄り付かない」


つまり、冷やかしするような人は来ないという事か? それとも、警察とかが寄らないってことか? 


「じゃあ、似たようなの無いの?」


「……あるけど、やめた方が良い」


「どうして?」


「呪われる」


そんな物を売っているのかと思ったが、あいにく俺は呪いを信じていない。デザインさえ気に入ればいいのだ


「とりあえず、見せてくれる?」


そう言うと、店主は黒い箱をカバンから丁寧に取り出す


留め金を外して、中を見せてくれると、さっきの指輪なんかよりもリアルな髑髏が入っていた


というか、髑髏しかないからまさか本物か? いや、指輪ほどの頭蓋骨なんて少なくとも人のものじゃないよな


「ね? やめた方が良い」


無言の俺を、気味悪がったのだと判断した店主は、再び箱のふたを閉めて留め金をとめる


「いや、買おう。いくら?」


「……本当に、買うの? 2万だけど」


他のものの数倍の値段だった。正直、アクセサリですらなさそうな髑髏に、なぜ固着するのか自分でも分からなかったが、財布から2万円を取り出すと店主に渡す


「返品は出来ないよ? 本当に良いの?」


「ああ」


店主から、最後の警告ともとれる確認をうけ、承諾する。俺は箱を受け取ると、大事にカバンへ入れる


その日から、俺は自身が本当に呪われたのだと感じた


一人で店に入ると、何故か2名分の水が出される


人気のない場所を歩いていると、自分の後ろを歩く足音が聞こえる


カメラで鏡越しに自分を写すと、何も無い場所にも顔がキャプチャされる


幸いにも、自分でそれを見ることはないが、どうやら本物の様だ


俺は、ある女性にぬいぐるみを贈る事にした


あの髑髏をぬいぐるみの中にいれて

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