第795話 4階 解明ルート
4人は3階へと着いた。そこは、2階と作りがほぼ一緒で、コールセンターの代わりに大部屋になっているだけだった。
卯月「なんか、詰まんないなー。何も無さ過ぎ」
如月「まあ、こんなもんだろ。あれ?」
如月は、2階には無かったある物に気が付く。1階と2階は、ぐるりと半周した折り返し地点が非常階段になっていた。そして、両方とも当然のごとく鍵がかけられていた。
如月「非常階段に、南京錠がかけてあるぞ」
弥生「本当、変ね。鍵でも壊れていたのかしら?」
弥生は、ドアを開けようとするが、鍵はきちんと機能しているようで開くことは無かった。
睦月「どこにも鍵は無かったし、開けるのは無理だな」
卯月「怪しいんだけどなー」
弥生「とりあえず、残り半分も見てみましょう」
睦月「シッ、静かに。何か、足音がしないか?」
4人は、息を殺して耳を澄ませる。すると、睦月が言う様に、コツンッコツンと革靴で歩くような音がする。
卯月「まさか、幽霊?」
如月「幽霊が足音させるわけないだろ。きっと、俺達以外にも肝試しに誰かが来たんだ」
弥生「肝試しに来た人ならいいけど、警備員とか病院の関係者だったら見つかったらやばいわね」
睦月「みんな、これを靴に巻け。静かに、足音に気をつけて脱出するぞ」
睦月は、背負っていたリュックから複数のタオルを出す。10枚1セットなのか、10枚あったのでそれぞれみんなの右足左足に巻いても余裕がある。
卯月「まるで、泥棒みたい」
如月「警備員だったら、俺達は本当に泥棒扱いなんだよなぁ……」
弥生「静かにしてよ、気づかれたら終わりよ」
睦月「明かりも絶対につけるなよ。月明かりを頼りに行くぞ。幸い、ここまで廊下に音が出るような障害物も何も無かったから、大丈夫だろう」
4人はゆっくりと、音を立てないように2階へと降りる。逆に、足音は階段の方へと向かってくる。
睦月「このままだと、鉢合わせしてしまう。コールセンターのカウンターの中へ隠れるぞ」
4人は、出来る限り体を縮こまらせてカウンターの下へと隠れる。ここならば、覗き込まない限り見える事は無いだろう。謎の足音は、階段を上って2階へと来た。懐中電灯をつけているのか、ゆらゆらとした明かりが見える。
足音は、カウンターに隠れる4人には気が付かずに、そのまま3階へと向かっていった。
睦月「今のうちだ、行こう」
弥生「音を立てないようにね」
足音は遠ざかっていく。その隙に、4人は病院を脱出する事が出来た。
如月「車、何もされてないよな?」
弥生「見た感じ、大丈夫みたいよ」
卯月「あそこ、バイクがある。きっと、肝試しに来た誰かだよ」
睦月「そうだと良いな。戻ってくる前に早く行くぞ」
如月は、車を出来るだけ静かに発進させる。そして、細い曲がりくねった山道に、苦戦しながらも無事に大きな道路まで出る事が出来た。
如月「ふぅ、最後、ひやひやしたぜ」
弥生「本当に、今までで一番スリルを感じたかもしれない」
卯月「別の意味で怖かったねー、でも、楽しかった」
睦月「それじゃあ、今日はもう遅いから解散だな」
3人「賛成ー」
こうして4人の肝試しは無事に終わったのだった。そして、家に着いた睦月は、スマホからあるサイトを開く。
睦月「無事、楽しく肝試しが出来た。協力感謝する」
実は、サイトは睦月が楽しく肝試しをするために開いた、協力サイトだった。睦月も実際にあったことは無いが、そこに出入りしている近くに住んでいる誰かに、今日の肝試しのスパイス役として協力してもらっていた。つまり、この企画はマッチポンプだった。そして、万が一サイトを見つけて開かれたらバレるため、3人にはサイトに繋がらないと言い訳して。
けれども、睦月も知らなかった。本当はその日来るはずだった誰かは、急用が出来ていけなかったことを。そして、他のサイト内のメンバーは誰もその病院へと行っていないことを。果たして、バイクで病院へ来ていたのは誰だったのか。
数日後、サイトに新たな書き込みがあった。
「あの病院、やばいぞ。絶対に行くべきじゃない」
「どうしたんだ? 何があった?」
「あの病院について、嫌な話を聞いた」
そいつは、病院について詳しい話を語った。あの病院では、臓器売買が行われていた。しかし、都合の良い患者がそうそう来ることもない。金に困った院長は、とうとう健康な患者を病気にしたて、臓器を抜く事にした。
その結果、一人の女性が亡くなっていた。病院は、そのことを隠すために、女性の遺体を病院のどこかへ隠したそうだ。
今でも遺体は見つかっておらず、きっと病院の関係者をひどく恨んでいるだろうと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます