第792話 4階 4
弥生「拍子抜けね」
睦月「思ったよりも怖くないしな」
卯月「綺麗すぎるんだよ! 学校の夜警と変わらないんじゃないの」
1階部分を一周したけれど、特に目立つ物も無かった。特にホラー好きの卯月にとっては、いつもの肝試しよりも怖くない事に不満げだ。特に曰くも何も聞いていないため、中古物件の見学をしているのと変わらない。
如月「まあ、まだ1階だし。そもそも、目的は噂の四階だろ? それなら、さっさと2階へ行こうぜ」
睦月「そうだな。階段は中央付近だ。エレベーターの隣にある」
四人は階段へ向かう。何も無くて見晴らしがいいため、迷う事も、何かが飛び出してきそうと怯える事も無い。そして、階段を上る前に卯月がエレベーターのボタンをポチポチと押す。
卯月「やっぱり、動かないねー」
如月「やめろよ、電気も通ってないのに動いた方が怖いだろ」
卯月「まあ、そうなんだけど。ゲームなら、どこかに非常電源とかあって動かせるんだろうけどね」
病院には停電の時などの緊急用に自家発電装置があるのだが、この病院には無い。延命装置などの機械が置いてないからだ。重傷者は、他の病院へと移される。手術も、事故などでの骨折治療や盲腸手術などの命の危険性が低いものしか行われていなかった。その手術室も、患者を乗せる台がある程度で、血が飛び散っているとか、怪しい何かが置かれていたということもなかった。
睦月「下へ向かう階段は無しと。それじゃあ、行くか」
四人は階段を上って2階へと着いた。
睦月「2階はさっきも言った通り、ナースセンターとか備品室とか、職員が主に使う場所になっているはずだ。だから、もしかしたら1階よりもさらに見るものが無いかもしれない」
卯月「そんなぁ。それじゃあ、このまま3階へ上っちゃう?」
弥生「せっかくだから、一応調べましょうよ。まあ、書類なんかは全く残ってなさそうだけどね」
弥生は軽くナースセンターを覗いて何も無い事を確認しながらいう。懐中電灯をつけ、一部屋ずつ覗いてみるけれど、元薬品棚や書類置き場などはやはり何も無く、棚のみがあるだけだ。仮眠室も、何に使われていたのか分からない空室も見たが、目新しいものはない。次に見るのは、トイレだ。四人はまず、男子トイレに入る。
卯月「1階のトイレは洋式だったのに、2階のトイレは和式なんだね」
弥生「ちょっと卯月、そんなにジロジロ見るもんじゃ無いでしょ」
卯月「だって、1階の時は本当に軽く見るだけで終わったじゃん」
睦月「トイレに何かあるとは思わないからな。それに、軽く見ただけでも本当に何も無かっただろ?」
卯月「使いかけのトイレットペーパーすら無かったよ。トイレがしたくなったらどうするのさ」
如月「そん時は、水の流れないトイレにするしかないだろ」
卯月「絶ッ対に嫌! その時は、ダッシュで帰るから!」
睦月「おいおい、それは無いだろ。トイレを見てたら、逆にしたくなりそうだから、さっさと切り上げようぜ」
1階は病人用に優先的に洋式に工事されていたが、2階は職員しか使わないため工事が後回しにされて和式しかなかった。だからと言って、何かがあるわけではないが。
女子トイレの方も見るが、何も無い。鏡すら外されているので、自分の後ろに知らない誰かが映った、なんていう事も無い。
卯月「やっぱり、水も流れないかー」
卯月が水を流すレバーを触りながらいう。
睦月「ライフラインは全部止まっているはずだからな。それに、水も蒸発するくらい放置されてるようだ。便器の中の水も全く無いからな」
弥生「睦月、女子トイレなんだから男子があんまり見ないでよ」
睦月「便器なんてどれも一緒だろうが……」
弥生「ナースが使っていたトイレって、何かいやらしいじゃない」
如月「お前がそんな事言わなかったら、想像すらしてねぇよ……」
卯月「あっ、想像したんだ。エッチねー」
如月「想像してねーよ!」
四人は特に何も無かったトイレを後にし、再び階段へと向かう。
如月「卯月の言う通り、そのまま3階でもよかったかもな」
弥生「べ、別にいいじゃない。時間が無いわけじゃ無いんだし。それなら、さっさと3階へ向かいましょう」
卯月「じゃあ、私が先に上るねー」
ここまで何も無さ過ぎて、四人の緊張感は下がっていた。
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