第745話 彼女自慢
友人の彼女自慢がうざい
やれ弁当を作ってくれただの、センスのいい服を選んでくれただの、事あるごとに自慢してくる
「じゃあ、肝心の彼女を見せてくれよ」
「お前、そう言って俺の彼女を取る気だろ? だから、会わせるわけにはいかないな」
友人はそう言って会わせてくれることは無かった
せめて写真を見せてくれと言うと、写真を見せてくれたが、それはなんか合成っぽい写真だった
「本当に彼女、いるんだよな?」
「当たり前だ」
友人は、彼女と旅行へ行ったり、買い物へ行ったりした時にブログに報告を上げているのだが、そのどれも場所の写真だけだったり、買った物だけだったりと彼女が写ることは無かった
そこまで隠されると、気になるのが人というものだ。休みの日に、その友人を見張る事にした
友人から、彼女と買い物へ行く予定だと聞いていたからだ
部屋から出てきたのは友人だけだった。友人は、そのまま駅へと向かう。そこで待ち合わせしたのだと思ったが、待つことなく電車でデパートへ向かった
デパートで待ち合わせしたのかと思えば、そのまま中へと入っていく
「なんだ、やっぱり彼女なんていなかったんじゃないか」
もう演技はいいぞ、と友人に声をかける事にした
友人に近づくと、誰かと話している。しかし、彼の前には誰も居ない
「よう」
偶然を装って話しかける
「なんだよ、わざわざ来たのか。それなら、言ってくれればいいのに」
彼はバツが悪そうに頭をかいていた。じゃあ、一緒に遊ぶか……そう言おうと思ったが
「バレたならいいか、俺の彼女だ」
彼はそう言って、誰も居ない場所を紹介する
「え? どこにいるんだ?」
「あん? 何言ってるんだ、ここだよ」
彼はそう言って、再度誰も居ない場所を紹介する
「何も見えんぞ」
「そんな馬鹿な」
彼はパントマイムの様に、何もない空間をなぞる
「まあ、邪魔して悪かったな」
どうしても彼女が居る事にしたいのだと思った俺は、今回は素直に帰る事にした
その日、友人があげたブログの写真には、友人が写っていた。ただ、その肩には、黒い影が写っていた
それ以後、友人と連絡が取れなくなった
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