第707話 リフォーム
俺の住んでいる家は古い
なにせ、祖父の時代かその前くらいに建てられたものらしいから、少なくとも40年以上は経っているだろう。もしかしたら、それよりも古いかもしれない
昔ながらの家という事で、部屋数も多いし、廊下を通らないと他の部屋に行けないので冬なんかは寒い
今は、祖父は亡くなったし、父親は認知症がひどいので介護施設へ入った。この家に住んでいるのは実質俺と母親だけだ
弟も居るけれど、今は県外で社宅に住んでいるから今は居ない
掃除するだけでも大変だという事で、思い切ってリフォームする事にした
幸い、親も俺も家を建てたことが無いのでそれなりに貯金はある。新築を建てられる金は十分にあるのだが、なんだかんだで思い入れがあるので、部屋数を減らして居住性を向上させる事にした
そこで、設計書を作るに当たって建築士が調べたところ
「ここに変な空間があるんですが、何か知りません?」
見ると、確かに空間がある。実際にその場所を見ても壁があるだけだし、反対側からも壁なので空間があるなんて全く知らなかった
母親も知らないし、父親はボケててよくわかってないし、弟は俺と一緒で知るわけが無いだろう。とりあえず、誰も知らないのでそこも含めて部屋を繋げることになった
実際に工事が始まり、壁を壊すと、その空間には意外な事に梯子があった
「この家に2階なんてあったのか?」
外から見ても、2階の窓なんて無いし、見ただけでは天井の高さも分からないので知らなかった。第一、四方が壁に囲まれているんだから、そもそも行き来するためのものじゃないかもしれない
もしかしたら、天井裏の修理にでも使っていたのかもしれないけれど、とりあえず気になったので壊す前に登ってみる事にした
一応、頑丈な木で腐っていなかったので俺の体重でも折れることは無く大丈夫そうだ
懐中電灯を持って天井裏を覗く。すると、1辺が40cmくらいの箱が1つ置いてあるだけだった。木の箱は、しっかりと釘が打ち付けてあり、簡単には開かないようになっていた
「これ何かわかるか?」
母親に聞いたけれど、やはり知らないという
大工さんにくぎ抜きを借りて、開けてみる事にした。釘を外し、ふたを開けてみる
「骨……」
一瞬びっくりしたが、完全に骨だけだったので意外と怖くない。博物館なんかに置いてあるものとそんなに変わらないし
見ると、頭がい骨の他にも大人一人分の全身の骨が入っていそうだった。無理やり詰めたのか、折られている骨も多い
「一体誰の骨だ?」
事件性があるかどうか分からなかったので、警察に連絡するとDNA検査を行う事になった
調べた結果、骨は祖母のものだという事が分かった。祖母は確か、行方不明で死亡したことになっていたはずだ。だから、俺は祖母を見たことが無い
ここにあるという事は、誰かが殺して隠したという事なのだろうか
その日の夜、夢を見た。知らない女性だったが、なんとなく祖母だという事が分かった。祖母が言うには、俺の父親が殺したらしいが、理由は分からなかった
父親はボケているので、真相は結局分からなかったが、祖母の骨はきちんと埋葬することになった
それからすぐに、父親は亡くなった。夜間に、急に心臓が止まったらしく、胸を押さえたまま死んでいたらしい
警察曰く「よっぽど驚くような事があったんでしょうね」
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