第666話 墓地で

小学校の時、墓地で遊んだことがある


公園で友達とかくれんぼをしようという事になった


公園のすぐ近くには、お墓があった。当時は、お墓が何かすらわかっていなかったくらいに小さかったので、ただの石でできた何かくらいにしか思っていなかったのだ


5人でかくれんぼ。公園にはいろいろな遊具や、花壇、小屋や物置などがあり、本格的に隠れることはできなかったけれど、小さい子共にはちょうどいい遊び場だった


そんな中、絶対に見つからないぞと気合を入れていた僕は、お墓の後ろに隠れた


しばらくしたけれど、誰も探しに来ない。やっぱり、ここはずるだったのかな? と思ってお墓の横から覗いてみた


「あれ?」


公園には誰も居なかった。もしかして、見つからないもんだからみんな帰ったのかな? 全くそんな声すらなかったんだけど


だけど実際に公園には誰も居ない。だから、僕も帰ろうとした


「あれ、出られない?」


何か壁のようなものがあって墓地の敷地内から出られなかった


「ちょっと! 出してよ!」


叫んだけど誰も来ない。いや、何かよく分からないものが近づいてきているのが見えた


公園の入り口から、真っ黒い人のようなものがフラフラと近づいてくる


僕は一生懸命に逃げ道を探したけれど、壁があって出られない


とうとう、その真っ黒い人のようなものが墓地へと入ってきた


「ごめんなさい! もうここでは遊びません!」


そう言った時、さっきまで隠れていたお墓の後ろが光った。僕はそこに急いで走りこんだ。そして、しばらく息を殺していると


さっきの黒い人が墓の後ろを覗き込んできた。その顔は、骸骨で……僕はフッと意識を手放した


気が付くと、元の墓場だった。さっきまで何の音もしなかったけれど、今は友達の声が聞こえる


「おーい!」


「あっ! みっけ!」


誰でもいいから人と一緒に居たかったので、自分から鬼に見つかりに行った


「どこにいたんだよ、探したんだぞ」


「お墓に居たんだよ。みんなこそどこにいたのさ」


「ずっと探してたんだぞ。だけど、お墓の方も一応探したんだけどな?」


よくわからないけれど、僕は墓地で遊ぶものではないと実感した

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