第654話 キノコ

近くに来たので、久しぶりに友人の家へ遊びに行った


「よう、元気か」


玄関に出迎えてくれた友人にそう声をかける


「ああ。狭いけど上がってくれ」


それは比喩なんかではなく、本当に狭くなっていた


大学の頃からルーズなところはあったが、部屋はごみ屋敷の様だった。しかし、生ごみなどは無いのか、臭いは無かった


「いいもの見つけたんだ。これを見つけてから運がものすごくよくなったんだ」


そう言って、見たことのないキノコを見せてきた。そして、そのまま生で食い始めた


「これを食ってから、宝くじは当たるわ宝石は手に入るわ、資格だって山ほどとったぞ」


そう言ってゴミ袋を見せてきた。次に、どこで拾ったのかなんの変哲もない小石を見せてきて、最後は紙の束を見せてきた


「これがどうしたんだ?」


「すごいだろ? これ全部キノコのおかげなんだぜ」


意味が分からない。もしかしたら、幻覚でも見ているんじゃないか。そう思ってキノコを取り上げようとしたとき


「これに触るんじゃねえ! 出ていけ!」


そいつは驚くくらいに豹変し、俺を追い出した


しばらくして、そいつは餓死したと聞いた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る