第562話 歌

ドライブ中、この車についての話を思い出す




いわく、この車は事故車である




いわく、この車には幽霊が憑りついている




いわく、この車に対する一切の苦情は受け付けない




ただ、値段は安かったのと、一切の苦情は受け付けないとは言っているが、通常の修理等は行ってくれるという事はよかったとおもう




最初のうちは、さすがに怖かったので日中の明るいうちだけ乗っていた




しかし、あまりに何も起きないまま1か月が過ぎ、怖さも薄れてドライブをしたくなったのだ




そして、海岸通りを流している時に、横から声が聞こえた




横を向いても当然誰も居ない




ラジオなんてつけていない、静かなままドライブしたかったのだから




風の音では無い、なぜなら風なんて吹いていないから




それに、今は信号待ちだし




声を集中して聞いていると、だんだんとはっきり聞こえてきた




しかし、その声は一人だけではない




男の声もあれば、女の声もある




若い声もあれば年寄りの声もある




不思議と、全員が歌を歌っているように話すのだ




静かなドライブもいいが、歌を聞きながらのドライブもいい




センスがいいのか、ドライブに最適な歌のようだ




買ってから1年が経つが、幸いにも幽霊を見る事も、事故を起こすことも無い




ただ、夜になると気持ちのいい歌が助手席から聞こえてくるだけだ

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