第545話 木馬

子供のころ、家には木馬があった




木馬と言うのは、ゆらゆらとゆれるゆりかごの馬バージョンとでも言えばいいのだろうか




前後に揺れるだけのそれに、子供のころ随分と遊んでいた記憶がある




しかし、大きくなるにつ入れて足が伸び、小さな木馬には乗り切れなくなった




そこからは、倉庫にしまうだけの存在になってしまった




私には弟も、妹も居ない




つまり、誰もあれを使う人が居ないのだ




しかし、倉庫を建て直す事になり、一度倉庫の中身を家の中に運び込んだ




その中に、あの木馬もあったのだ




ある時、その木馬が揺れていた




風で動くわけでも、誰かが触ったわけでもないのに




不思議に思い、その揺れている木馬をジッと見ていると、木馬にまたがった白い何かが見えた気がした




その白い影が、一生懸命に木馬を揺り動かしていた




その影か、私の方を向いて――




そこで目が覚める。どうやら、夢を見ていたらしい




木馬は揺れていなかった




私に子供が出来たら、この木馬で遊ばせてやろう




それが、この木馬の望みだと感じたからだ

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