第487話 虫の大群

ある国では、虫が大量発生する事がある




イナゴだ




それが通った後には緑の草がすべてなくなるらしい




俺は興味があってその国に行った




今年は大量発生しやすい条件に合っているらしい




長くても1か月の滞在だろう




助手として昔の友人を連れて行った




一人だけで外国に行くのは怖かったし、一か月も言葉が通じない場所で過ごすのは耐えられないと思ったからだ




安いホテルに数日滞在していると、窓に何かバチンと当たった




「来たみたいだぞ!」




見ると、それは一匹のイナゴだった




窓から外を見ると、空がまるで嵐のように黒くなっていた




「すげぇ、俺が良い映像を撮ってきてやるよ!」




そう言って友人は自作した網で顔を守り、イナゴの群れに向かって走っていった




「そこまでやる必要は無い! 戻れ!」




「大丈夫だって」




私の制止を聞かずに友人はカメラを持ったままイナゴの群れに入っていった




私は危険を感じてホテルに戻る




まかさ、こんなにも大群だとは思わなかったからだ




ホテルの人も何か言っているが、言葉が分からない




1時間ほど経っただろうか、イナゴの群れは通り過ぎていった




しかし、友人が戻って来ない




友人が向かって行った方向に走る




すると、カメラが落ちていた




それ以外に落ちているものはない




カメラは録画状態のままだった




友人の行方が分かるかもしれないと、カメラの録画を止め、再生を押す




「おお、すげぇ。周り中がイナゴだらけだ。あっという間にそこらじゅうの植物が食われてる」




友人の声だけが入っていた。画面はほぼイナゴに覆われていてほとんど意味がない




「いて、ぶつかると結構痛いな。ん? あれは……?」




友人が何かに気が付いたのか、そちらにカメラを向ける




「なんだあれは、く、くるな! ぎゃああ!」




友人の叫び声が聞こえる。一体何があったというのだろうか




友人はカメラを投げ捨て、逃げ出した




その瞬間、カメラには人間の顔がついたバッタが映る




そのバッタたちは、友人を追いかけて行った




私はカメラで確認できた友人が逃げたであろう方向へ向かう




するとそこには、無残に体を食い荒らされた友人が……




どう見ても死んでいる友人の体が動く




すると、傷口からさっきのバッタが飛び出してきた




私はそれを捕まえて、虫かごに入れる




ほどなくして警察が到着し、いろいろと聞かれた




片言ではあったが日本語が話せる警官がいてよかった




その警官にバッタを見せる




「バカ! これ持ってる、また奴ら戻ってくる! 放せ!」




そう言って警官はせっかく捕まえたバッタを逃がしてしまった




一瞬、そのバッタの顔が友人の顔に見えた


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